軽井沢スキーバス転落事故を検証する-2016/01/15

軽井沢スキーバス転落事故

軽井沢スキーバス転落事故

(共同通信)

この度の長野県軽井沢町スキーバス転落事故によって亡くなられた方々、
ご遺族、関係者の皆様に、衷心よりお悔やみ申し上げます。

また、負傷をされた方々には、一刻も早い回復をお祈りいたします。


序 文

現在、運転者の技量や、事故現場の走行が習熟訓練であったかのような情報が流れている。
しかし、そのことを知る当事者等は既に死亡し、真相は誰にも分からない。
つまり、習熟訓練説は憶測であり、信憑性を認めることは科学的ではない。


考 察 #1

ここで、道路に着目して事故態様を考察してみる。
本件スキーバスの事故現場は、下り車線の旋回半径はR=107m(図測)である。


軽井沢スキーバス転落事故図測

この旋回半径は、道路構造上50km/hの速度で安全に曲がりきれるものだ。

この旋回半径であれば、運転者の技量にもよるが、
70km/h程度であれば路外を逸脱する事はないと思料されるため、
当該バスが路外に逸脱したのは、下り坂で70km/hを超える速度にまで
加速されたことと認めて矛盾がないであろう。

現時点で、情報が少なく判断できないが、断片的な情報と他事例から鑑みると、
80~85km/h以上の速度で路外に飛び出したと考えられる。

勿論、運転者にも生存本能があるため、自ら加速したとは考えにくい。
つまり、運転者の意に反して何らかの理由で車両が加速したと認めた方が合理的であろう。

そうした場合、最も疑われるのはブレーキ故障だ。
そもそも、大型車が下り坂でブレーキが利かなくなる事象は少なくない。
多くは、擁壁などに車体を擦過させて停車させるので大事には至っていないからだ。

ところが、こういった事故の殆どは貨物車である。
旅客車で起きた事例は数えるほどしかない。


考 察 #2

 交通事故
【バス、線路に突っ込む スキー帰り、乗客ら42人重軽傷--大分】

『2013.02.18 東京朝刊』
  27頁 社会面 写図有 (全899字) 

 17日午後5時50分ごろ、大分県九重町町田の町道で、スキーツアー帰りの観光バスが、 丁字路交差点のガードレールを突き破り、約5メートル下のJR久大線の線路に突っ込んだ。 前部が大破しており、大分県警玖珠(くす)署や日田玖珠広域消防組合によると、 乗員乗客44人のうち骨を折るなどの重傷が4人、軽傷は38人。

 線路が変形しており、JR九州は午後6時ごろから近くの引治(ひきじ)―豊後(ぶんご) 中村(いずれも同町)間の運転を見合わせている。

 列車の乗客にけがはない。同署によると、バスは城北交通大川営業所(福岡県大川市)の所属。 交差点には信号があり、下り坂を走行中だった。 九重町役場関係者によると、運転手は「ブレーキが利かなかった」と話していたという。(以下略)


一番、事故事例に近いのはこの件であろう。

この事件について大分県警は翌年2月3日、フットブレーキの多用でフェード現象を起こし、
ブレーキが利かなくなったことが主因と判断し、
運転していた男性を自動車運転過失傷害容疑で書類送検している。
ちなみに、この事故現場では同様の事故が過去10年に7回起きていた。

ところで本件であるが、過去に同様の事故があったとの報道は聞こえてこない。
報道は真っ先に環境的要因、すなわち現場で同様の事故が起きていたか否かを取材する。
つまり、本件で事故現場付近で同様の事故が起きたとする報道がないことは、
同様の事故が起きていないことを匂わせるものだ。

本件事故原因で次に疑われるのは、車体の製造物に由来する不具合だ。
ただし、不具合に由来する事故であれば、同様の事故が頻発する可能性が高くなる。
しかし、これについては聞こえてこないことから、製造物に由来するリコールは考えにくい。

そこで、一番疑われるのが、整備不良によるブレーキ故障だ。
報道などによると、バス会社の杜撰な管理などを考慮すると、
適切な整備を行っていたと俄には信じられない。

あくまでも消去法による推定であるが、ブレーキ故障、
もしくはローリング制御のスタビライザー故障が最も疑われる。

バス会社の杜撰な管理実態と併せ考察すると、
車両の整備不良が本件事故の原因であると認めて矛盾はないだろう。

2016/01/16
法科学鑑定研究所
嘱託鑑定人:石橋