DNA鑑定で父親じゃなかったらどうなる?鑑定方法の種類や流れを解説
「子どもの父親は自分じゃないのかもしれない」
「もし父親じゃなかったらどうすればいいのだろう」
母親に対して浮気や不倫の疑惑がある場合、このような不安を抱く男性も少なくないでしょう。結論に触れると、DNA鑑定で父親じゃなかったとしても、つまり子どもの血の繋がった父親があなたでなかったとしても、養育費の支払い義務が生じる可能性があります。
法律上の親子関係を解消できれば原則として支払い義務は生じませんが、タイムリミットがある点に注意してください。本記事ではDNA鑑定で父親じゃなかったらどうなるのか、具体的な流れを詳しく解説します。
DNA鑑定で父親じゃなかったらどうなる?
DNA鑑定はほぼ100%の精度で生物学的父親かどうか(血がつながっているかどうか)がわかります。もし「父親じゃない」とわかった場合、気になるのは以下の2点でしょう。
- 養育費支払義務はある?
- 離婚できる?
養育費支払義務はある?
養育費の支払義務が発生する可能性があります。最高裁判所の判決(平成26年7月17日)によると、「DNA鑑定による生物学上の親子関係」よりも「嫡出推定による法律上の親子関係」が優先されるからです。
ただし、「嫡出推定による法律上の親子関係」を否定すれば、養育費の支払義務は原則として発生しません。法律上の親子関係を解消するための方法は以下の2つです。
- 嫡出否認の訴えを提起する
- 親子関係不存在確認の裁判を提起する
前者には1年以内という期限が設けられています。
(嫡出否認の訴えの出訴期間)第七百七十七条 嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知った時から一年以内に提起しなければならない。 引用:e-GOV|民法(明治二十九年法律第八十九号) |
後者に期限はありませんが、厳しい条件に当てはまらなければ利用できません。つまり、「1年以内に嫡出否認しなければ養育費の支払義務を拒むことは難しい」といえるでしょう。
すこしでも「自分の子どもではないのかもしれない」と感じたら、早めにDNA鑑定することをおすすめします。
離婚できる?
離婚できる可能性は高いといえるでしょう。DNA鑑定で親子関係がないと明らかになれば、妻は夫以外の男性と不貞行為をしたことが明らかだからです。妻の有責性も明らかであり、慰謝料の請求も可能です。
ただ、妻に有責性があったとしても、妻のほうが収入が少なければ婚姻費用を支払わなければなりません。民法第752条では、次のように定められています。
(同居、協力及び扶助の義務)第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。 引用:e-GOV|民法(明治二十九年法律第八十九号) |
このように定められているため、妻から「生活費を支払ってほしい」と請求された場合、原則として断ることはできません。婚姻費用の支払いを拒むことは、民法第752条違反になりかねないのです。もっとも、別居に至った原因が妻の不貞行為にあれば、減額されることもあるでしょう。
DNA鑑定で父親じゃなかったときにすべきこと
DNA鑑定で父親じゃないとわかった場合、男性が選ぶべき主な選択肢は3つあります。
- まずは話し合う
- 離婚を協議する
- 慰謝料請求する
まずは話し合う
最も穏便に解決できる方法が話し合いです。離婚の協議や慰謝料請求と違って、基本的に当事者だけで解決できるからです。まずは離婚を含め「どうするか」を当事者同士で話し合うのが大切です。
調停や裁判で離婚を進めるとなると、長い年月を要する可能性があります。時間だけでなく精神的にも消耗するため、仕事や人間関係に影響が出る恐れがあるでしょう。
当事者同士での解決が難しい場合、以下の第三者に仲介してもらうのがおすすめです。
- 共通の知人
- 自分の両親
- 弁護士
ここで重要なのが、報酬を対価として相手と交渉できるのは弁護士だけという点です。法律の専門家には行政書士や司法書士もいますが、どちらも交渉権を持っていません。したがって、法律的な判断が必要になる場合は弁護士に依頼しましょう。
離婚を協議する
DNA鑑定で親子関係がないということは、妻が婚姻期間中に不貞行為をはたらいたという証明になります。以上の点から、離婚が認められる可能性は極めて高いといえるでしょう。
不貞行為は民法第709条違反となる可能性が高いとされています。
(不法行為による損害賠償)第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。 引用:e-GOV|民法(明治二十九年法律第八十九号) |
法律上の親子関係が解消されると、子どもは「父親が存在しない状態」となります。
慰謝料請求する
妻・不倫相手それぞれに慰謝料を請求できます。ただし、慰謝料請求には以下の時効があるという点に注意してください。
- 不貞行為および不倫相手を知ったときから3年間
- 浮気・不倫が始まったときから20年間
このうち、いずれか短いほうで時効が成立すると法律で定められています。(改正民法724条)
「DNA鑑定で父親じゃなかった」となる確率は?
調査によれば、DNA鑑定を実施したうちの約8割に「親子関係がある」とわかっています。逆に考えれば、2割(5人に1人)に「親子関係がない」という結果が出ているのです。
2022年12月現在において、DNA鑑定は刑事事件の証拠として扱われることも多く、その正確性はほぼ100%です。したがって、DNA鑑定で「親子関係がない」という結果が出たら、その子どもは「別の父親の子どもである可能性が極めて高い」といえるでしょう。
上述したとおり、嫡出否認は1年以内に提起しなければなりません。すこしでも「父親じゃないのかもしれない」と不安に思うなら、早めにDNA鑑定するべきです。
DNA鑑定を母親が拒否した場合
母親に拒否された場合、基本的にDNA鑑定を利用することはできません。なぜなら、DNA鑑定は原則として父と母双方の了承が必要だからです。母の同意なく無断でDNA鑑定すると、慰謝料や損害賠償の請求を起こされる可能性があるため注意してください。
母親に拒否された場合、DNA鑑定以外の証拠を用いて親子関係を否定することになります。例えば、SNSやDM、メッセージのやりとりなどです。いかにして状況証拠を集められるか、が鍵を握ります。
そもそもDNA鑑定を拒否するという行為自体が裁判官に「後ろめたいことがある証拠だ」と感じてもらうことができるでしょう。このように状況証拠を提出するという方法があるため、拒否された場合は無理にDNA鑑定を進める必要はありません。
「DNA鑑定で父親じゃなかったら」と不安に思う人の疑問を解決
「DNA鑑定で父親じゃなかったら」と不安に思う人がよく抱く疑問に回答します。ここで回答するのは以下の4つです。
- DNA鑑定は本当に正確?
- DNA検査の費用はいくら?
- DNA鑑定の手順は?
- DNA鑑定で父親じゃなかったらどうすべき?
DNA鑑定は本当に正確?
正確です。
2022年12月時点において、DNA鑑定の精度は565京人に1人です。つまり、99.99%の精度で識別できるようになっています。
DNA検査の費用はいくら?
法科学鑑定研究所の場合、以下のとおりです。
- 私的鑑定:33,000円〜
- 法的鑑定:66,000円〜
DNA鑑定の手順は?
私的鑑定の場合、以下のとおりです。
- アカウント作成・検査申し込み
- 検査キット到着・DNA採取
- DNAサンプルの返送
- ご報告
法的鑑定の場合、研究員によるDNAを採取します。
DNA鑑定で父親じゃなかったらどうすべき?
まずは話し合いの場を設けましょう。話し合いがうまくいかなければ、法律上の親子関係を解消し、離婚を協議する流れになります。
「父親じゃなかったら…」と不安に思うならDNA鑑定のご相談を
法律上、血のつながった父親じゃなかったとしても、原則として養育費を支払わなければなりません。つまり、母親に非があるにも関わらず、血のつながっていない子どもを育てなければならないのです。
このような事態を避ける方法が嫡出否認です。嫡出否認が認められれば法律上の親子関係を解消することができます。ただし、嫡出否認するためには出生から1年以内に提起しなければなりません。
したがって、すこしでも「父親じゃないかもしれない」と感じたら、とにかく早めにDNA鑑定を受けるのが重要です。後悔することがないように、まずはDNA鑑定を利用してみましょう。