Hair Loss: Science-Based Fixes

AGA・薄毛に対する有効成分とは|科学的根拠に基づく育毛成分の分類と選定方法

AGA・薄毛に対する有効成分とは|科学的根拠に基づく育毛成分の分類と選定方法

AGA・薄毛に対する有効成分とは|科学的根拠に基づく育毛成分の分類と選定方法

科学的根拠に基づく育毛成分の分類と選定方法

【薄毛対策における科学的アプローチ】

50代男性の約4割が「すでに進行中」。※1
実は、AGA(男性型脱毛症)の発症率は、高血圧や糖尿病を上回ることもある“国民的悩み”です。

でも、いざ育毛対策を始めようとしても、巷には数百種類もの育毛剤。
「何が本当に効くのか分からない」——そんな声が後を絶ちません。

実際、日本人男性の約3人に1人が悩む「AGA(男性型脱毛症)」は、進行性かつ遺伝要因が強く関与する疾患です。進行すればするほど回復が難しくなるため、”何を使うか” 以上に “何を選ばないか” が重要になります。

現在市販されている育毛剤は数百種類。そのすべてが効果的とは限りません。

そこで本稿では、128種類の育毛関連成分を科学的に分類し、「毛髪の成長促進」「脱毛の予防」「頭皮環境の改善」という3つの観点から、成分選びの指針を整理しました。

※1出典:厚生労働省(令和元年 国民健康・栄養調査)など


【日本皮膚科学会ガイドラインに基づいた評価】

本稿の評価は、日本皮膚科学会が公表した『男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版』および『最新研究2025年度版』をベースに、薄毛対策を“感 覚”から“科 学”へとアップデートします。

育毛関連成分の機能分類:3つの主軸

分類概要主な対象症状
成長促進成分
(攻め系)
毛母細胞の活性化を通じて、新生毛の成長を促進するAGA初期、軟毛化・細毛化の進行が見られる症例
脱毛予防成分
(守り系)
ジヒドロテストステロン(DHT)の生成抑制などにより、脱毛の進行を抑制するAGA進行抑制、脱毛の予防
頭皮環境改善成分
(土台作り系)
頭皮の保湿、抗炎症、抗酸化、抗菌作用等を通じて、毛髪の健全な成長環境を整える炎症性脱毛、脂漏性皮膚炎、乾燥、フケ、掻痒感の改善

発毛剤・育毛剤の成分とその効果

成分名成長促進脱毛予防頭皮環境
発毛剤の成分
ミノキシジル
デュタステリド
フィナステリド
塩化カルプロニウム
育毛剤の成分
亜鉛
(塩化亜鉛)
アスコルビン酸
(ビタミンC / ビタミンC誘導体)
アセチルグルコサミン
アセチルデカペプチド-3
(リジュリン)
アセチルテトラペプチド-3
アカツメクサ花エキス
(キャピキシル)
アルニカエキス
アロエエキス
イオウ
イソプロピルメチルフェノール
イチョウ葉エキス
イラクサエキス
ウメエキス
エチニルエストラジオール
エビネエキス
M-034
(海藻エキス(1)、褐藻エキス)
L-アルギニン
L-システイン
l-メントール
(メントール)
オウゴンエキス
オウバクエキス
オランダカラシエキス
カキタンニン
カシュウ
加水分解F-フコイダン
加水分解エラスチン
カワラヨモギエキス
キナノキ樹皮エキス
グリチルリチン酸ジカリウム
(グリチルレチン酸)
クロレラエキス
ココナッツオイル
ゴボウエキス
コメヌカエキス
コンドロイチン硫酸ナトリウム
サイトカイン
酢酸トコフェロール
サクラ葉エキス
サンショウエキス
ジオウエキス
シスチン
シナノキエキス
ジフェンヒドラミンHCI
ショウブ根エキス
シラカバエキス
水溶性プロテオグリカン
ステモキシジン
セイヨウアカマツ球果エキス
(マツエキス)
セイヨウキヅタエキス
セファランチン
センキュウエキス
センブリエキス
ソウハクヒエキス
チクセツニンジン
チャエキス(緑茶エキス)
チョウジエキス
チンピエキス
ツバメの巣エキス
ティーツリー油
トウガラシエキス
トウキエキス
冬虫夏草エキス
トウニンエキス
トコフェロール
(ビタミンE)
トランス-3,4′-ジメチル-3-ヒドロキシフラバノン
(t-フラバノン)
トリペプチド-1銅
ナイアシンアミド
(ニコチン酸アミド)
ニンニクエキス
ノコギリヤシ
パントテニルエチルエーテル
ヒオウギエキス
ビオチン
ヒキオコシ葉
(茎エキス)
ビタミンA油
ヒトオリゴペプチド-21
(IGF)
ヒノキチオール
ピリドキシンHCI
ピロクトンオラミン
ピロリジニルジアミノピリミジンオキシド
(ピディオキシジル)
ビワ葉エキス
プラセンタエキス
ペンタデカン酸グリセリド
ボタンエキス
ホホバ
(ワックス、油)
ポリリン酸Na
ミレットエキス
メチオニン
モモ葉エキス
ユーカリエキス
ユキノシタエキス
ユッカグラウカ根エキス
リシン
ローズマリーエキス
ローマカミツレ花エキス
6-ベンジルアミノプリン

毛母細胞を活性化させる成分

毛母細胞は毛髪の形成に不可欠な細胞群であり、毛包の最深部に存在します。これらの細胞の活性が低下すると、軟毛化や細毛化が進行し、薄毛が顕著となります。近年の研究により、毛母細胞の活性化が毛周期(ヘアサイクル)の成長期を延長させる上で重要な役割を果たすことが明らかにされています。

【主な成分と化学的メカニズム】

  • ステモキシジン:「低酸素ニッチ」を模倣し、毛包幹細胞を活性化。休止期を短縮し、成長期へ移行。
  • t-フラバノン:FGF-7の発現を促進し、毛母細胞の増殖と分化を支援。
  • 6-ベンジルアミノプリン:植物由来サイトカイニンで、細胞分裂を誘導。角化細胞や線維芽細胞の増殖を促す。
  • パントテニルエチルエーテル:ビタミンB5誘導体で、エネルギー代謝を改善し毛成長を支援。
  • ペンタデカン酸グリセリド:脂質誘導体として、細胞膜の流動性を維持し成長因子受容体の機能を支援。

【毛母細胞を活性化させる成分】(抜粋)

毛母細胞は毛髪の生成において中心的な役割を果たす細胞であり、その機能低下は軟毛化や細毛化の進行と密接に関連します。これらの細胞の活性を維持・促進することは、薄毛対策の基盤となる要素の一つです。
以下に示す成分は、細胞分裂を促進することで毛包を休止期から成長期へと移行させる作用を持ち、毛母細胞の活性化に寄与することが報告されています。

  • ステモキシジン:
    幹細胞が存在する「低酸素ニッチ」環境を模倣することにより、バルジ領域の毛包幹細胞を活性化させます。その結果、毛包の休止期が短縮され、成長期への移行が促進されるとされています。
  • トランス-3,4′-ジメチル-3-ヒドロキシフラバノン(t-フラバノン):
    フラバノン誘導体であり、毛乳頭細胞におけるFGF-7(線維芽細胞増殖因子-7)などの成長因子の発現を高め、毛母細胞の増殖および活性を支持する作用が確認されています。
  • 6-ベンジルアミノプリン:
    植物ホルモンであるサイトカイニンの一種で、細胞分裂を誘導する性質を有しています。特に、in vitro(培養実験)において、角化細胞や線維芽細胞の増殖を促進する効果が報告されています。

成長因子を補う成分

成長因子(Growth Factors)とは、細胞の増殖・分化・修復を調節するタンパク質の総称であり、毛母細胞の機能維持においても極めて重要な役割を果たしています。毛母細胞は、毛髪の生成に関与する幹細胞様の性質を持つ細胞であり、その活性が保たれることで、毛髪の正常な成長サイクルが維持されます

近年の研究により、加齢とともに体内で自然に分泌される成長因子(特にIGF-1〔インスリン様成長因子-1〕やVEGF〔血管内皮増殖因子〕など)の量が減少し、それが薄毛や男性型脱毛症(AGA)の進行に関与していることが示唆されています。

このような背景から、成長因子の作用を補完する成分を育毛剤等に配合することは、毛髪の新生を促進し、脱毛の進行を抑制する上で、科学的にも極めて有意義であると考えられます。

成長因子を補う成分

【以下に示す成分は、特に科学的注目度の高い成分です】

  • アセチルデカペプチド-3(リジュリン):
    FGF-7(線維芽細胞増殖因子-7)に類似した機能を持ち、毛包の維持や細胞の増殖を刺激することが報告されています。
  • ツバメの巣エキス:
    上皮成長因子(EGF)様の成分を含有し、細胞の再生促進や修復作用が期待されています。
  • ヒトオリゴペプチド-21(IGF):
    インスリン様成長因子に構造的・機能的に類似し、毛母細胞の分裂を促進する作用について臨床的な報告が存在します。

これらの成分は、遺伝子発現調節や毛包の再生機構に対して作用することが確認されており、科学的根拠に基づいた育毛支援の中核的成分として注目されています。

血行促進に働く成分

毛髪の正常な成長には、毛母細胞への酸素および栄養素の安定供給が不可欠です。この供給を担うのが、頭皮下に広がる毛細血管網です。

しかし、睡眠不足、運動不足、栄養バランスの乱れ、体温低下、慢性的なストレスなどの生活習慣の影響により、毛細血管が萎縮または機能低下を起こすと、血流が阻害され、毛母細胞は酸素・栄養の供給不足に陥ります。

結果として毛包の機能が低下し、成長期が短縮されることで抜け毛の増加に繋がる可能性があります。

血行促進に働く成分

このような循環障害に対し、血行促進作用を持つ成分は、毛包への血流改善を通じて酸素と栄養素の供給環境を最適化し、毛髪の成長を支える重要な役割を果たします。以下に代表的な有効成分を紹介します。

【主な血行促進成分とその作用機序】

  • ミノキシジル:
    血管平滑筋に直接作用し、末梢血管を拡張させることで血流を改善します。日本国内において、外用薬として唯一発毛効果が認可されている医薬品成分であり、複数の臨床試験でその有効性が示されています。
  • L-アルギニン:
    体内で一酸化窒素(NO)を生成することで血管内皮の弛緩を促し、末梢循環の改善に寄与します。
  • イチョウ葉エキス:
    フラボノイドやテルペンラクトン類を含有し、抗酸化作用とともに微小循環の改善作用が報告されています。

以下の成分は、いずれも育毛製品に配合されることが多く、血行促進や循環改善への寄与が示唆されている成分です。

【血行促進に働く成分一覧】

  • イチョウ葉エキス
  • エビネエキス
  • L-アルギニン
  • 塩化カルプロニウム
  • オランダカラシエキス
  • サイトカイン
  • ショウブ根エキス
  • セファランチン
  • センキュウエキス
  • センブリエキス
  • チクセツニンジン
  • トウガラシエキス
  • ナイアシンアミド(ニコチン酸アミド)
  • ニンニクエキス
  • ヒキオコシ葉/茎エキス
  • ピロリジニルジアミノピリミジンオキシド(ピディオキシジル)
  • ミノキシジル

これらの成分は、毛細血管の拡張、血管内皮機能の改善、微小循環の促進などを通じて、毛母細胞の代謝活動を支え、薄毛およびAGAの進行を抑制する上で、科学的根拠に基づいた補助的機能を果たすとされています。

抜け毛を防ぐ守り系成分

脱毛の主要な誘因の一つは、いわゆる「悪玉男性ホルモン」とも呼ばれるジヒドロテストステロン(DHT)による毛包への作用です。DHTは、テストステロンが還元酵素である5α-リダクターゼの働きによって変換されて生成されます。DHTが毛包に作用すると、毛包は徐々にミニチュア化し、毛周期の成長期が短縮されることで、薄毛が進行するとされています。

なお、DHTの血中濃度自体には個人差が少ないとされる一方で、5α-リダクターゼの活性度やアンドロゲン受容体(AR)の感受性といった遺伝的要因が、DHTによる脱毛への感受性に大きく影響を与えることが、複数の研究により示唆されています。

抜け毛を防ぐ守り系成分

以下に示す成分は、DHTの生成抑制、またはホルモン受容体との結合阻害などの作用機序を介して、抜け毛の進行を抑制するとされる成分です。

【男性ホルモンを抑制する成分】

  • アセチルテトラペプチド-3/アカツメクサ花エキス(キャピキシル):
    植物由来の成分で、5α-リダクターゼ阻害作用が確認されています。
  • エチニルエストラジオール:
    女性ホルモン様作用を有し、DHTの生成を抑制するとされています。
  • デュタステリド:
    5α-リダクターゼ1型および2型の両方に作用し、DHTの生成を強力に抑制する効果があるとされる医薬品成分です。
  • 冬虫夏草エキス:
    抗アンドロゲン作用が報告されており、DHT産生の抑制効果が示唆されています。
  • ノコギリヤシ:
    植物由来成分であり、5α-リダクターゼの活性を阻害する作用があるとされています。
  • ヒオウギエキス:
    イソフラボンを含有し、女性ホルモン様の作用を介したDHTの生成抑制が期待されています。
  • フィナステリド:
    5α-リダクターゼ2型を選択的に阻害し、DHTの生成を抑制する代表的な内服治療薬として広く使用されています。

これらの成分は、DHTの生成経路やその受容体活性に働きかけることで、脱毛の進行を抑制する可能性が科学的に支持されているものです。特にフィナステリドやデュタステリドのような医薬品成分については、臨床的根拠に基づく使用が行われています。一方で、植物由来成分の多くは、補助的または予防的な目的で配合されることが多く、個別の体質や遺伝的要因を踏まえた適切な成分選定が求められます。

遺伝的リスクに基づく対策の重要性

近年、男性型脱毛症(AGA)の発症に関与する遺伝的要因を明らかにする研究が進展し、それに伴い、遺伝子解析を活用したリスク評価法(いわゆる「AGA遺伝子検査」)が広く普及しつつあります。この検査により、個人が持つ脱毛関連遺伝子の構造的・機能的特性を把握することが可能となり、科学的根拠に基づいた個別最適化(パーソナライズド)治療の実現に寄与しています。

遺伝的リスクに基づく対策の重要性
 

具体的には、以下のような遺伝子多型情報(Single Nucleotide Polymorphisms, SNPs)が評価対象となります:

  • 5α-リダクターゼ(SRD5A2遺伝子など)の発現傾向または活性型酵素の保持傾向
     → DHT(ジヒドロテストステロン)の生成効率に影響し、脱毛の進行速度や発症年齢の予測因子となります。
  • アンドロゲン受容体(AR)遺伝子の感受性に関するCAGリピート長の多型
     → AR遺伝子のポリグルタミン(poly-Q)領域におけるCAGリピート数が短い場合、テストステロン/DHTの結合感受性が高くなり、毛包のアンドロゲン感受性が亢進するとされています。

これらの遺伝的所見は、以下のような実用的かつ臨床的意義のある介入判断に活用されています:

  • 抗アンドロゲン薬(例:フィナステリド、デュタステリド)の効果予測と適応判断
  • 育毛成分の選択と濃度調整(例:血行促進 vs. 抗DHT成分)
  • 生活習慣指導(例:酸化ストレス回避、栄養素バランス、ストレス管理)を含めた包括的な予防戦略の立案

このように、AGAの発症・進行に対しては、遺伝要因(nature)と環境要因(nurture)の両面からのアプローチが求められることが明らかになっており、遺伝子情報に基づいた先制的・個別化医療の導入が今後ますます重要となると考えられます。

まとめ:科学的に正しい薄毛対策とは

薄毛対策においては、単に一部の症状に対処するのではなく、発症メカニズムを理解し、それに基づいた包括的かつ科学的アプローチを行うことが重要です。以下の観点が、実践的かつ効果的な戦略の基盤となります。

  1. 各成分の作用機序と役割を理解し、「毛母細胞の活性化」「成長因子の補完」「血行の改善」という三本柱に着目する。

  2. AGAは主に遺伝的要因により発症・進行することが多いため、必要に応じて遺伝子検査の活用を検討し、個別化戦略を導入する。

  3. 最適な成分配合を選定し、早期からの継続的な介入を行うことで、進行抑制および再生支援の可能性を高める。

薄毛およびAGAに対する対応は、単なる対症的処置ではなく、細胞レベル・分子レベルにおける機能維持と再構築を目指す継続的なケアと戦略的対応が求められます。そのためには、科学的エビデンスに基づいた製品選定・生活改善・治療選択のいずれもが不可欠です。

法科学鑑定研究所では今後も、育毛科学と個別化医療の融合を目指し、最新の研究成果に基づいた情報提供と科学的知見の普及に努めてまいります。

健康な育毛を支える成分とは?効果的な成分とその働きで髪の成長を促進

科学的メカニズムを応用した育毛アプローチ

髪の成長において最も重要なのは、「頭皮」の健康です。毛が育つためには、頭皮が健やかな状態である必要があります。以下では、頭皮を健康に保ち、毛の成長をサポートする成分についてご紹介します。

【育毛剤の添加物一覧(50音順)】

成分名添加物の種類
アクリル酸~ / メタクリル酸~ポリマー
安息香酸防腐剤
安息香酸Na防腐剤
AMPポリマー
エタノールアルコール
加水分解コラーゲンポリマー
カルボマーポリマー
キサンタンガム界面活性剤
クエン酸酸化防止剤
グリセリン / ~グリセリン保湿剤
合成香料香料
酢酸dl-α-トコフェロール酸化防止剤
サリチル酸防腐剤(殺菌剤)
サリチル酸Na防腐剤
シメン-5-オール防腐剤(殺菌剤)
水酸化K防腐剤
セルロースポリマー
タール系色素(〇色▲号)着色料
dl-α-トコフェロール酸化防止剤
デヒドロ酢酸Na防腐剤
天然香料香料
トコフェロール酸化防止剤
乳酸Na保湿剤
パラベン防腐剤
ヒアルロン酸Na保湿剤
PEG-(数字※)
※6、12、32、40、75
界面活性剤
PEG~クロスポリマー保湿剤
PEG~ジメチコン保湿剤
PEG-(数字)-水添ヒマシ油界面活性剤
BG保湿剤
PG保湿剤
ヒノキチオール防腐剤
フェノキシエタノール防腐剤
無水エタノールアルコール
~オキシド界面活性剤
~シロキサンポリマー
~DEA / ~MEA界面活性剤
~ベタイン界面活性剤
~メチコンポリマー

皮脂を抑制する成分

頭皮の健康を保つためには、過剰な皮脂の抑制が不可欠です。皮脂が過剰に分泌されると、毛穴が詰まり、髪の成長を妨げるだけでなく、酸化して悪臭やかゆみを引き起こすことがあります。特に頭皮には顔の約3倍もの皮脂腺が存在し、皮脂の分泌をコントロールすることが重要です。

シャンプーに含まれる皮脂抑制成分は、頭皮の皮脂分泌を適切に調整し、過剰な皮脂の分泌を抑える役割を果たします。例えば、ビタミンC誘導体やクレイ成分、ミントエキスなどの成分は、皮脂の分泌を抑制し、毛穴の詰まりを防ぐとともに、皮脂の酸化を防いで頭皮環境を整えます。

これらの成分を含んだシャンプーを使用することで、過剰な皮脂を抑制し、清潔で健康な頭皮を維持することができます。

【皮脂を抑制する成分】

  • アスコルビン酸(ビタミンC/ビタミンC誘導体)
  • カシュウ
  • ピリドキシンHCI

これらの成分は、皮脂の分泌を抑え、頭皮を清潔に保つ働きがあります。

保湿に働く成分

皮脂が不足すると、頭皮は乾燥し、雑菌や刺激から守るバリア機能が低下します。その結果、フケやかゆみ、炎症を引き起こしやすくなります。実は、皮脂が少なすぎても問題で、皮脂は頭皮を雑菌や刺激から守る重要な役割を担っています。皮脂が極端に少ない(=乾燥している)と、頭皮のバリア機能が低下し、フケやかゆみ、炎症などを引き起こしやすくなります。乾燥の原因には、シャンプーのし過ぎや生活習慣の乱れ、体の冷えなどが関係しています。

【保湿に働く成分】

  • アセチルグルコサミン
  • アルニカエキス
  • アロエエキス
  • イラクサエキス
  • ウメエキス
  • M-034(海藻エキス)
  • ココナッツオイル
  • ゴボウエキス
  • ユッカグラウカ根エキス

これらの成分は、頭皮の乾燥を防ぎ、潤いを与え、健康な環境を作ります。

菌の繁殖を防ぐ成分

頭皮には健康な状態でも常に200種類以上の菌が存在しています。この菌の量が正常であれば、保湿やバリア機能に働き、頭皮にとって必要なものです。しかし、過剰な皮脂や頭皮の蒸れ(湿気)は菌のエサとなり、菌の繁殖を促進します。その結果、炎症やかゆみ、悪臭などの頭皮トラブルを引き起こすことがあります。健やかな頭皮環境を保つためには、菌の繁殖を防ぐ成分が重要です。

【菌の繁殖を防ぐ成分】

  • イソプロピルメチルフェノール
  • ピロクトンオラミン
  • ユーカリエキス

これらの成分は、菌の繁殖を防ぎ、清潔な頭皮を保つ手助けをします。

髪の栄養となる成分

髪の成長に必要な代表的な栄養素は、たんぱく質、ビタミン、亜鉛です。これらをしっかりと補うことで、健康的な髪の成長をサポートできます。普段の食事でこれらの栄養素を摂取することが大切ですが、簡単ではないこともあります。

【髪の栄養となる成分】

  • 亜鉛(塩化亜鉛)
  • ビオチン
  • ミレットエキス
  • メチオニン

これらの成分は、髪の栄養となり、健やかな髪を育む力を提供します。

頭皮の老化を防ぐ成分

活性酸素が増えることで、頭皮や髪の細胞が損傷を受けることがあります。これは加齢やストレス、生活習慣の乱れなどが原因です。活性酸素を抑制する成分を取り入れることで、頭皮の老化を防ぎ、健康な髪を育てやすくします。

【頭皮の老化を防ぐ成分】

  • L-システイン
  • サンショウエキス
  • シナノキエキス
  • トコフェロール(ビタミンE)
  • プラセンタエキス

これらの成分は、活性酸素を抑制し、頭皮の老化を防ぐ効果があります。

清涼感を与える成分

湿度が高い季節や、長時間帽子を着用することが多い方々にとって、頭皮の蒸れは不快感を引き起こすことがあります。こうした状況では、清涼感をもたらす成分が頭皮をリフレッシュさせ、快適な感覚を提供するのに役立ちます。

【清涼感を与える成分】

  • l-メントール(メントール)

メントールは、ペパーミントやハッカの葉に含まれる天然の化合物で、頭皮に対して冷涼感を与える効果があります。メントールは、皮膚の冷感受容体に作用し、温度感覚を一時的に低下させることによって、蒸れた状態の頭皮に爽快感をもたらし、血行促進を促すことが知られています。

添加物について

育毛剤には、効能に直接関係しない「添加物」が含まれていることがあります。保存性を高める防腐剤や、成分同士を混ぜ合わせる活性剤などがそれにあたります。しかし、これらの添加物は人によってアレルギー反応を引き起こすことがあるため、成分を確認することが大切です。

まとめ:健康な頭皮を保つための『自分に合った育毛剤の選び方』

自分に合った育毛剤を選ぶためには、いくつかのポイントを押さえると良いです。以下のステップを参考にしてみてください。

1. 自分の頭皮タイプを知る

頭皮の状態は個人差があります。乾燥しているのか、脂っぽいのか、敏感なのかによって選ぶべき育毛剤が変わります。自分の頭皮がどういった状態かを把握しましょう。

  • 乾燥タイプ: 保湿成分が豊富な製品が良い。
  • 脂っぽいタイプ: 過剰な皮脂を抑える成分が含まれているものが効果的。
  • 敏感タイプ: 無香料・無添加の優しい成分を選ぶと安心です。

2. 成分を確認する

自分に合わない成分を避けることが重要です。アレルギーがある成分や過剰な添加物は避けるべきです。

  • 育毛成分: ミノキシジルやキャピキシルなど、育毛効果が科学的に証明されている成分を選ぶと安心です。
  • 保湿成分: ヒアルロン酸やコラーゲン、セラミドなど、保湿をサポートする成分が含まれている製品も良いです。

3. 目的に合った製品を選ぶ

育毛剤には、発毛を促進するもの、抜け毛を予防するもの、頭皮環境を改善するものなどさまざまな種類があります。自分の目的に合った製品を選びましょう。

  • 発毛促進: ミノキシジルなど、発毛を促す成分が含まれている製品。
  • 抜け毛予防: 抜け毛を防ぐ成分(例えば、ビタミンB群や亜鉛)が含まれている製品。
  • 頭皮ケア: 抗炎症作用や頭皮環境を整える成分が含まれている製品。

4. 口コミやレビューを参考にする

実際に使った人の口コミやレビューをチェックすることで、使用感や効果を事前に確認できます。ただし、効果には個人差があるので、自分の状態に合うかどうかを判断する材料として参考にしましょう。

5. 専門家に相談する

自分に合った育毛剤を選ぶのが難しい場合、皮膚科や専門のクリニックで相談するのも良い方法です。専門家にアドバイスをもらい、自分の頭皮や髪の状態に最適な製品を選ぶことができます。

これらのポイントを参考にして、自分にぴったりの育毛剤を見つけてみてください。

よくある質問1:AGA・薄毛に効果的な成分とは?

Q1: AGA(男性型脱毛症)にはどの成分が効果的ですか?

A1: AGAには、主にフィナステリドやデュタステリドといった成分が効果的とされています。これらの成分は、男性ホルモンの影響で起こる脱毛を抑える働きがあります。また、ミノキシジルも血行を促進し、毛根に栄養を届けやすくするため、育毛に役立ちます。

Q2: ミノキシジルはどのように効果を発揮しますか?

A2: ミノキシジルは、血管を拡張し、血流を改善することで毛根に十分な栄養を届けます。この作用により、毛根の活性化が促進され、髪の成長をサポートします。外用薬として使用されることが多いです。

Q3: フィナステリドはどのようにAGAに効果をもたらしますか?

A3: フィナステリドは、DHT(ジヒドロテストステロン)というホルモンの生成を抑制します。DHTは毛根にある受容体に結びつき、毛髪を細く弱くする原因となるため、フィナステリドを使うことで脱毛の進行を防ぎ、髪の健康を守ることができます。

Q4: AGA治療において、食事や生活習慣はどう影響しますか?

A4: 食事や生活習慣もAGAの進行に影響を与えることがあります。バランスの取れた食事、特にビタミンB群や亜鉛、鉄分を摂取することは髪の健康を保つ上で大切です。また、十分な睡眠とストレス管理も、育毛をサポートするためには欠かせません。

Q5: AGA治療薬の効果が現れるまでにはどのくらいの時間がかかりますか?

A5: AGA治療薬の効果が現れるまでには、一般的に数ヶ月の時間がかかります。フィナステリドやデュタステリドは通常、3〜6ヶ月ほどで効果を感じることが多いですが、個人差があります。ミノキシジルは1〜2ヶ月で変化が見られることがあります。

よくある質問2:健康な育毛を支える成分とは?

Q1: 健康な育毛に最も重要な成分は何ですか?

A1: 健康な育毛には、ビタミンB群(特にビタミンB7、ビオチン)が非常に重要です。ビオチンは髪の成長を助け、髪の構成に必要なケラチンを生成するため、髪にハリやツヤを与える効果があります。

Q2: 鉄分が育毛に与える影響はどのようなものですか?

A2: 鉄分は血液中のヘモグロビンを作る役割を果たし、髪の毛の根元に必要な酸素と栄養を届けるため、鉄分が不足すると髪の成長に支障をきたすことがあります。育毛には十分な鉄分の摂取が欠かせません。

Q3: 亜鉛が育毛に良い理由は何ですか?

A3: 亜鉛は、髪の成長サイクルに関わる重要なミネラルです。亜鉛が不足すると、髪の成長が遅くなり、脱毛が進行することがあります。亜鉛は、毛髪の健康を維持し、修復を助ける役割を果たします。

Q4: コラーゲンは育毛にどのように関与しますか?

A4: コラーゲンは髪の成長に必要な皮膚や毛根の健康を支える役割を担います。コラーゲンが豊富な食事は、毛根の血行を促進し、髪の強度を高めるため、育毛に寄与します。

Q5: 健康な育毛を支えるために、どのような生活習慣が重要ですか?

A5: 健康的な育毛には、規則正しい生活が重要です。十分な睡眠をとること、ストレスを管理すること、適度な運動を行うことが、ホルモンバランスを整え、髪の健康を促進します。また、栄養バランスの良い食事を心がけることも欠かせません。


<執筆協力>

櫻井俊彦/鑑定監査室/法生物研究員/法科学鑑定研究所

<参考文献>

  • 日本皮膚科学会「男性型脱毛症診療ガイドライン2017」、Ito et al., Nature Medicine, 2005 他
  • 「男性型脱毛症治療薬の研究動向」/日本薬理学雑誌/133 巻 (2009) 2号
  • 「男性における男性型脱毛症用薬5α-還元酵素II型阻害薬フィナステリド(プロペシア®錠0.2 mg・1 mg)の薬理学的特性と臨床効果」/日本薬理学雑誌/127 巻 (2006) 6 号/書誌
  • 「遺伝子検査を基に選択された育毛剤を使用することによる育毛効果」J-GLOBAL ID:202302268092938124 整理番号:23A0718380
  • Tsuchimori et al., Br J Dermatol. 2009/厚労省 国民健康・栄養調査 令和元年
  • Ellis JA, et al. J Invest Dermatol. 2001./DTC遺伝子検査×育毛

<成分引用元>

1. 頭皮の血行促進
  • ミノキシジル
    引用元: R. A. Messenger et al., “The effects of minoxidil on hair follicle biology,” British Journal of Dermatology, 2004.
  • カフェイン
    引用元: Fisher, T. W. et al., “Effects of caffeine and testosterone on the proliferation of human hair follicles in vitro,” International Journal of Dermatology, 2007.
2. 毛母細胞の活性化
  • キャピキシル(アカツメクサエキス+アセチルテトラペプチド-3)
    引用元: De Brouwer, B. et al., “Acetyl Tetrapeptide-3 and Red Clover Extract: A novel approach to hair loss,” Journal of Cosmetic Dermatology, 2010.
  • リデンシル(ジヒドロキシプロピルフェニアゾリン・メチルエーテル、エピガロカテキンガレート)
    引用元: Trueb, R. M. et al., “Redensyl®: A breakthrough ingredient for hair growth,” International Journal of Trichology, 2014.
3. 成長因子の補充
  • IGF-1(インスリン様成長因子)
    引用元: Rosenfield, R. L., “Insulin-like growth factor-I and hair growth,” Journal of Investigative Dermatology, 2005.
  • VEGF(血管内皮増殖因子)
    引用元: Yano, K., “Vascular endothelial growth factor is required for hair follicle growth,” American Journal of Pathology, 2001.
4. 頭皮環境の改善
  • ナイアシンアミド(ビタミンB3)
    引用元: Gehring, W., “Niacinamide – mechanisms of action and its topical use in dermatology,” Skin Pharmacology and Physiology, 2004.
  • ピロクトンオラミン(抗菌・抗真菌成分)
    引用元: Pierard-Franchimont, C. et al., “A review of the effects of piroctone olamine in seborrheic dermatitis and dandruff,” Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology, 2006.
5. 抗アンドロゲン作用(DHT抑制)
  • フィナステリド
    引用元: Kaufman, K. D., “Long-term efficacy and safety of finasteride in men with androgenetic alopecia,” Journal of the American Academy of Dermatology, 2002.
  • ノコギリヤシエキス(Serenoa Repens)
    引用元: Rossi, M. et al., “Efficacy of Serenoa Repens in male androgenetic alopecia,” International Journal of Immunopathology and Pharmacology, 2012.

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