離婚後にDNA鑑定したら自分の子どもじゃなかった!慰謝料の相場や父親の養育費は?
「離婚後にDNA鑑定したら子どもと血がつながっていなかったんだけど、どうすればいいのだろうか」
「妻から慰謝料は取れるのだろうか?養育費の支払いはどうなる?」
血がつながっていないとわかったら、さまざまな感情が入り混じってこのような不安や疑問を抱く方も多いでしょう。
離婚した後でも慰謝料の請求は可能です。ただし、慰謝料には時効がある点に気をつけてください。また、養育費に関しても「払わなければならないケース」「そうでないケース」があります。
本記事では慰謝料や養育費について解説し、DNA鑑定の重要性を紹介します。
離婚後にDNA鑑定して実子じゃなかったら慰謝料は取れる?
DNA鑑定して「自分の子どもじゃなかった」とわかった場合、慰謝料を取れるケースと取れないケースがあります。ここではそれぞれのケースを詳しく解説します。
慰謝料を取れるケース
基本的に、慰謝料を取れる可能性は高いといえるでしょう。DNA鑑定で「血がつながっていない」とわかった場合、妻が不貞行為をしたことはほぼ明らかだからです。
不貞行為は民法第709条違反となる可能性が高いとされています。
(不法行為による損害賠償)第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。 引用:e-GOV|民法(明治二十九年法律第八十九号) |
慰謝料を取れないケース
一方で、慰謝料の請求には時効があります(改正民法724条)。時効が完成している場合、慰謝料は請求できない可能性が高いため注意してください。
時効の成立は以下のとおりです。
- 不貞行為および不倫相手を知ったときから3年間
- 浮気・不倫が始まったときから20年間
上記のうち、いずれか短いほうで時効が成立すると定められています。
自分の子供じゃなかった時の慰謝料の相場は?
相場としては、一般的に100万円から300万円程度が多いとされています。
ただし、上記の要因によってはそれ以上の額になることもあります。
特に、経済的な損失が大きかったり、精神的なダメージが深刻であった場合には、さらに高額な慰謝料が認められることがあります。
また、慰謝料の額は、最終的には裁判所の判断に委ねられるため、具体的な額については弁護士に相談するのが良いでしょう。
離婚後にDNA鑑定して実子じゃなくても養育費は払うべき?
「自分の子どもでないなら、養育費は必要ないのでは」と考えている場合、間違っているといえるでしょう。場合によっては、自分の子どもじゃなくても養育費の支払い義務が生じます。
養育費を払わなければならないケース
基本的には実子じゃなくても、養育費の支払い義務が発生する可能性があるでしょう。その理由は、最高裁判所では「DNA鑑定による生物学上の親子関係」よりも「嫡出推定による法律上の親子関係」が優先されると判決が出ているからです。
※出生届によって法律的な父子関係が成立します。
嫡出推定による法律上の親子関係とは、次のような関係を指します。
- 妻が婚姻中に妊娠した子
- 婚姻の成立の日から200日を経過したあと、もしくは離婚後300日以内に生まれた子
上記に当てはまる場合、DNA鑑定の結果にかかわらず、法律的な父子関係の成立が優先され支払わなければならない可能性が高くなります。但し、法律の定める嫡出推定は、あくまでも「推定」であって絶対ではありません。
養育費を払う必要がないケース
上記の「嫡出推定による法律上の親子関係」に当てはまらない場合、子どもは「非嫡出子」となるため、認知をしなければ養育義務は生じません。
※婚姻200日以内に生まれた子どもは戸籍実務では「嫡出子」として扱われますが、後に親子関係不存在確認で争いになる可能性があります。
一方、嫡出推定に当てはまる場合は、妻が出産した子どもと夫の間に血縁関係がないことを明らかにし、法律的な親子関係を解消することで養育費の支払い義務がなくなります。この裁判上の手続きを「嫡出否認の訴え」といい、夫からの訴えのみ認められます。但し、嫡出否認の訴えにはタイムリミットがあるので注意が必要です。
(嫡出否認の訴えの出訴期間)第七百七十七条 嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知った時から一年以内に提起しなければならない。 |
つまり、嫡出否認の訴えは、夫は子どもが生まれたことを知ってから(一般的には出産の時)1年以内に限り認められています。1年以上経過すると嫡出否認の訴えはできなくなり、親子関係不存在確認という裁判を起こす必要が出てきます。親子関係不存在確認の裁判では、子どもの「嫡出子」という地位が優先される可能性があるため、親子関係が解消できるかどうかわからなくなります。
DNA鑑定して実子じゃなかったら離婚できる?
まだ離婚していない場合、気になるのは「そもそも離婚できるのか」という点でしょう。ここでは離婚できるケースと離婚できないケースを紹介します。
離婚できるケース
DNA鑑定で親子関係がないと明らかになれば、法律上の離婚理由を満たす可能性が高いといえます。妻はあなた以外の男性と不貞行為をしたことが明らかだからです。
妻に非があるため、慰謝料の請求も可能でしょう。ただし、上述したとおり慰謝料には時効があるという点に注意してください。
離婚できないケース
不貞行為は離婚理由を満たす可能性が高いため、基本的には離婚は成立します。ただし、妻側が離婚を拒否する場合もあります。この場合、協議離婚や離婚調停、離婚裁判などにもつれ込む恐れがあるでしょう。
ただ、ほとんどの場合、協議離婚で離婚が成立するケースが多いです。厚生労働省『令和4年度「離婚に関する統計」の概況』によると、88.3%が協議離婚で離婚しています。
血の繋がりに疑問を感じたらDNA鑑定するべき
血の繋がりに疑問を感じたら、なるべく早くDNA鑑定するべきです。ここではDNA鑑定するメリットと鑑定方法の種類を詳しく解説します。
DNA鑑定するメリット
DNA鑑定するメリットは主に以下の2つです。
- ほぼ100%親子関係がはっきりする
- 裁判で重要な必要書類になる
ほぼ100%親子関係がはっきりする
DNA鑑定は事実上、ほぼ100%の精度で親子関係の有無を判別できます。鑑定方法も簡単で、専用の綿棒で頬の内側を10秒程度こするだけです。
裁判で重要な必要書類になる
DNA鑑定は裁判で最も重要な必要書類の一つです。親子関係の有無を判別する方法として、DNA鑑定を超える手法はないからです。
ただし、裁判では裁判官から鑑定人に対して技術的な回答や証人尋問を求められるケースがあるという点に注意してください。DNA鑑定機関によっては、鑑定以外のサポートを実施していないところがあるため注意が必要です。
鑑定後もサポートしてもらいたい場合、法科学鑑定研究所のDNA鑑定がおすすめです。
鑑定方法の種類
鑑定方法には以下の2種類があります。
- 私的鑑定
- 法的鑑定
私的鑑定
私的鑑定とは個人的な確認を目的として行われる鑑定です。法的鑑定より値段が安く、被験者本人が自宅で検体採取をおこなうという特徴があります。
一方で鑑定結果はpdfでのお渡しとなるため、法的な書類として利用しにくいというデメリットがあります。これは本人性の確保がされていない鑑定結果となるためです。
法的鑑定
「法的鑑定」とは、調停や裁判などで親子関係の証明として利用することを目的とした鑑定です。私的鑑定より値段が高く、検査場で専門スタッフ立会いのもと検体採取をおこないます。
検査場に行く手間がかかる一方で、書類でのお渡しとなるため裁判などの必要書類として使いやすいというメリットがあります。
法的鑑定・私的鑑定ともに検査の方法や精度は変わりません。DNA鑑定を実施する検査試料の本人性をどこまで確保するのかが大きな違いとなります。お客様の目的にあった鑑定方法を選ぶのがベストです。どの鑑定を申し込んだら良いか分からない場合は一度お問合せ下さい。
DNA鑑定を受けて結果が出るまでの流れ
DNA鑑定を受けて結果が出るまでの流れは私的鑑定と法的鑑定で異なります。
私的鑑定の流れ
私的鑑定の流れは以下のとおりです。
- アカウント作成・検査申し込み
- 検査キット到着・DNA採取
- DNAサンプルの返送
- ご報告
「DNA鑑定24」を利用することで、24時間以内で鑑定結果を確認することが可能です。
法的鑑定の流れ
法的鑑定の流れは以下のとおりです。
- アカウント作成・検査申し込み
- 研究員によるにてDNA採取
- DNAサンプルの返送
- ご報告
私的鑑定と同じく「DNA鑑定24」を利用すれば24時間以内に鑑定結果が出るため、急いでいる方でも安心できるでしょう。
DNA鑑定なら法科学鑑定研究所
重要なのはDNA鑑定機関をしっかりと選ぶということです。選び方を間違えてしまうと、トラブルになりかねません。
安心してDNA鑑定を受けたい場合、法科学鑑定研究所がおすすめです。ここでは法科学鑑定研究所をおすすめする理由を3つ紹介します。
世界最高品質の遺伝子解析技術を提供している
法科学鑑定研究所は裁判所や警察、医療機関から採用されているDNA検査機関です。その強みは優秀な技術力と検査力、厳しい品質管理に支えられた日本製検査の質の高さです。
さらに、法科学鑑定研究所はDNA検査の専門家が在籍する民間のDNA検査機関で、以下の特徴があります。
- 全国13都道県地域・弁護士協同組合特約店
- 全省庁統一資格を取得
- 法科学技術学会の研究論文発表多数
このような特徴は、他のDNA検査機関にはありません。
経験豊富な鑑定人を用意し、万全の体制で法的鑑定する
裁判では、DNA鑑定に関するさまざまな質問の回答を求められることがあります。ここで重要になるのがDNA鑑定人です。
鑑定人はDNA検査/鑑定に関する十分な知識と技能、経験を持つことが条件とされています。法科学鑑定研究所は経験豊富な鑑定人が在籍しているため、サポート体制も万全です。
毎年学術研究論文を発表している
法科学鑑定研究所は毎年学術研究論文を発表しています。例えば、次のような実績があります。
- 2022年度:cfDNA断片長解析による妊娠中DNA親子鑑定の精度への影響
- 2022年度:外国人集団を対象としたアレル出現頻度の算出
- 2021年度:妊娠中の母体血中胎児DNAを用いた父子鑑定の検討
このように学術的な実績も豊富なのが、法科学鑑定研究所の強みといえるでしょう。
DNA鑑定して自分の子どもではないとわかったら
DNA鑑定して「自分の子どもではない」とわかっただけでは、親子関係は消滅しません。何もしなければ、そのまま嫡出推定で親子関係が成立してしまいます。
ここでは「自分の子どもではない」と法的に認めてもらう方法と、想定される問題点について解説します。
自分の子どもではないと法的に認めてもらう方法
自分の子どもではないと法的に認めてもらう方法は主に2つあります。
- 嫡出否認の訴え
- 親子関係不存在確認
嫡出否認の訴え
民法772条では「婚姻してから200日経過した後、または婚姻の解消から300日以内に生まれた子どもについては夫の子どもと推定する」としています。つまり、子どもが不倫相手との間に生まれた場合でも、この条件に当てはまれば法律上は「夫の子」として扱われるのです。
これは男性側にとって「不都合である」といえるでしょう。このような不都合を覆すために、法律では「嫡出否認」によって親子関係を否定することを認めています。
ただ、嫡出否認するためには、夫が子の出生を知ったときから1年以内に提起しなければならず、調停も申し立てなければなりません。この調停において証拠を求められた際に提出しなければならないのがDNA鑑定です。
親子関係不存在確認
嫡出否認ができない場合、親子関係不存在確認という方法があります。嫡出否認と違って、親子関係不存在確認は期間に制限がありません。
ただし、条件が非常に厳しいため、認めてもらうのは困難です。主な条件は以下のとおりです。
- 夫が行方不明場合
- 夫が長期間にわたり、海外に滞在していたり、在監中である場合
- 夫の生殖能力が医学的にない場合
つまり、健康体であれば認められる可能性は低いといえるでしょう。
したがって、いかに「出生後1年以内に嫡出否認できるかどうか」が重要です。すこしでも「自分の子どもではないかも」と考えたら、まずDNA鑑定を利用しましょう。
自分の子でないとわかった場合の問題点
自分の子でないとわかった場合、いくつかの問題点が生じます。
- 離婚訴訟は長引くことがある
- 当事者同士の話し合いが困難になるケースも多い
- 婚姻費用を支払わなければならない
離婚訴訟は長引くことがある
離婚訴訟は解決までかなり時間がかかります。また、離婚訴訟は事前に離婚調停を申立てなければなりません。
相手方が離婚に応じれば問題ありませんが、応じない場合、長期化する傾向にあるといえるでしょう。
当事者同士の話し合いが困難になるケースも多い
当事者同士で解決できれば、それに越したことはありません。しかし、多くの場合において冷静に進めることは難しいでしょう。
話がまとまらない場合、弁護士などの第三者に仲介してもらうことをおすすめします。それでもまとまらなければ、裁判することになりかねません。
婚姻費用を支払わなければならない
収入差がある場合、所得の高いほうが所得の低いほうへ婚姻費用を支払う必要があります。基本的に、婚姻費用は婚姻関係が続く限り支払い義務が発生すると考えてください。
離婚届を提出し正式に離婚が成立するまでは、夫婦は婚姻費用を分担し続けなければなりません。したがって、相手が離婚に応じない場合、所得が高いほうが損をし続けることになります。
養育費の支払いを拒否された際の対処法
ここでは女性の立場に立って、養育費の支払いを拒否された際の対処法を3つ紹介します。男性も知っておいて損はないでしょう。
男女間で協議をする
まずは夫婦間で協議し、養育費の金額や頻度、期限について取り決めます。欧米諸国と異なり、日本では裁判を起こさない協議離婚が認められているのです。
家庭裁判所の養育費調停をする
協議がまとまらない場合、養育費調停を実施して、家庭裁判所の調停委員に立ち会ってもらい客観的な判断を仰ぐ必要があるでしょう。家庭裁判所の調停委員は双方の家庭環境や経済状況から客観的に解決策や助言を提案してくれます。
養育費請求審判を申し立てる
養育費調停でまとまった内容を無視された場合、養育費請求審判を申し立てることができます。養育費請求審判とは、家庭裁判所の裁判官に判決を下してもらう手続のことです。
審判の場合は裁判官が最終的に養育費の額などを決め、法的な強い効力を持った審判書が発行されます。
強制執行を実施する
相手が養育費調停や審判を守らなかった場合や支払いの義務があるにもかかわらず拒否した場合、強制執行を実施できる可能性があるでしょう。強制執行とは差し押さえのことです。
離婚後にDNA鑑定しても慰謝料は取れる可能性あり
離婚後でもDNA鑑定して「自分の子どもではない」とわかった場合、慰謝料を取れる可能性があるでしょう。ただし、嫡出推定を否定しない限り、法律上の親子関係が認められ養育費の支払い義務が生じてしまいます。
養育費の支払いを断りたい場合、DNA鑑定を申し込んで法的な証拠を揃え、嫡出推定を否定しましょう。嫡出推定の否定には「出生を知ってから1年」という期限があります。「確実に自分の子どもだ」と確信しているとき以外は、なるべく早くDNA鑑定を申し込むのが重要です。