【取材】毎日新聞 2022-05-01
2022年5月1日付け
【取材】毎日新聞
格段に難しい人骨のDNA鑑定 血液や皮膚と比べて量少なく
DNA鑑定について
格段に難しい人骨のDNA鑑定 血液や皮膚と比べて量少
なく
社会|速報|山梨
毎日新聞2022/5/1 11:44(最終更新 5/1 16:29) 有料記事1297文字
未成年のものとみられる骨の一部が見つかった現場
付近を捜索する捜査員=山梨県道志村で2022年4月
28日、幾島健太郎撮影
キャンプ場周辺の沢で美咲さんを捜索する山梨県警
の警察官ら=山梨県道志村で2021年9月21日、田
中綾乃撮影
山梨県道志村の山中で見つかった未成年のものとみ
られる人骨の一部について、山梨県警がDNA型鑑定で
身元の特定を急いでいる。ただ、専門家からは骨の
DNA型鑑定は血液や皮膚などよりも難しく、発見され
た場所の環境や保存状態によっては、結果が出るまで
に時間を要するとの見方も出ている。
県警などによると骨は4月23日に捜索ボランティア
の40代男性が発見し、同25日に警察に届け出た。県警
は同26日から司法解剖で死因を調べるとともに、身元
確認のためDNA型鑑定を進めている。
人の細胞には遺伝情報を含む染色体があり、染色体はデオキシリボ核酸(DNA)という物質で
構成されている。DNAは人それぞれ異なるため、DNA型鑑定では、血液や毛髪などから抽出した
DNAを専用の機器で複製したり増幅したりして配列を分析し、個人を識別していく。
ただ、鑑定を進めるにはDNAを採取することが不可
欠だ。複数の専門家によると、皮膚や血液などと異な
り、骨自体はカルシウムでできているためDNAはほと
んど存在しないという。関節部位の骨や太い骨であれ
ば、内部の髄にDNAを含む白血球などがある可能性が
あるが、頭蓋骨(ずがいこつ)にはこうした髄も少な
いという。
青木康博・名古屋市立大教授(法医学)は「そもそ
も骨に含まれるDNA量は相対的に少ない。鑑定では骨
を砕いて溶かすなどして骨自体からDNAを抽出することになる。鑑定が可能なレベルの試料が採
取できるかどうかはやってみないとわからない」と話す。
2022/05/01 20:52 格段に難しい人骨のDNA鑑定 血液や皮膚と比べて量少なく | 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20220501/k00/00m/040/058000c 2/2
未成年のものとみられる骨の一部が見つかった現場
付近=山梨県道志村で2022年4月29日、渡部直樹
撮影
紫外線やバクテリアで分解
また、DNA型をはじめ指紋や薬物など年間800件もの鑑定を手がける山崎昭・法科学鑑定研究
所所長は「DNAは時間の経過とともに劣化するほか、紫外線や土中のバクテリアによって分解さ
れる可能性がある」と指摘。夏になれば高温多湿となるような場所で野ざらしの状態だった場
合、骨からDNAが抽出できないケースもあるという。
捜査関係者も「鑑定は1回だけ一致すればいいわけで
はなく、複数の試料がある程度の量とれないと難し
い。たとえ骨からDNAを抽出できたとしても、個人識
別に有効とされる配列を含むDNAが十分に検出されな
ければならない。それが欠損していると判定できな
い」と話した。
県警などによると、人骨が見つかった場所は、2019
年9月に当時小学1年の小倉美咲さん(千葉県成田市)
が行方不明になったキャンプ場付近から約600メート
ル離れた林道近くの水のかれた沢付近だった。骨の発見場所付近では28日から翌日にかけ、運動
靴や片方の靴下が相次いで見つかっており、県警はDNA型が鑑定できる付着物がないか調べてい
る。捜査関係者によると、靴下や靴の中のつま先付近はDNAが付着しやすいとされるものの、劣
化や汚れが激しいという。【岩崎歩】
1日の捜索は終了 新たな発見物なし
山梨県警は1日も午前9時から約40人態勢で、人骨や靴などが見つかった沢の付近を中心に捜索
した。雨のため午後4時ごろまでの予定を切り上げて同1時40分ごろに終了した。新たな発見物は
なかったという。2日も午前9時から約40人態勢で捜索する。【岩崎歩】
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