ゲノム・遺伝子・DNAの違いを分かりやすく解説!それぞれの特徴は?
DNA の解析技術が進歩し、DNAや遺伝子、ゲノムという言葉をマスメディアなどでもよく聞くようになりました。親と似ているところがあると「遺伝かな」と思ったり、「遺伝子や DNA は自分の特徴を決めるもの」となんとなく理解している方が多いでしょう。
そもそも DNA とは何なのでしょうか?そしてどのような働きをしているのでしょうか?
DNA や遺伝子、ゲノムがどのようなものかを知ると、これらの情報からどのようなことがわかるのかがハッキリしてきます。最近では DNA 検査を行う企業も増えているので、検査をしたい方も多いでしょう。ダイエットに生かすことができる遺伝子検査、自分の得意なスポーツが何かを探るための遺伝子検査、美肌を保つための遺伝子検査など、身近なところで役に立っている遺伝子検査もあります。
DNA・遺伝子・ゲノムの違いを分かりやすく例えると?
DNA → 本を作る紙や材料
- 情報を記録する基本的な材料
- 図書館のすべての本の素材
遺伝子 → 1冊1冊の本
- それぞれ異なる情報が書かれている
- 目的に応じて必要な本を読む
ゲノム → 図書館の蔵書すべて
- すべての情報を含む
- 生物の特徴を決める完全な情報セット
DNA・遺伝子・ゲノムの違い一覧表
項目 | DNA | 遺伝子 | ゲノム |
基本定義 | デオキシリボ核酸の略。遺伝情報を担う物質 | DNAの一部で、特定の形質を決定する機能的な部分 | 生物がもつ全ての遺伝情報の集合体 |
構造・特徴 | 二重らせん構造、4種類の塩基で構成 | 約30,000個存在、DNAの一部 | 約32億塩基対(ヒトの場合) |
主な役割 | 遺伝情報の保存・伝達 | タンパク質の設計図 | 生物種の特徴を決定 |
存在場所 | 細胞核内 | DNAの中の特定部分 | 染色体全体 |
検査・分析例 | DNA鑑定、親子鑑定 | 体質検査、疾患リスク | 全ゲノム解析 |
医療での活用 | 個人識別、親子判定 | 遺伝子治療、遺伝病診断 | ゲノム医療、個別化医療 |
主な活用分野 | 法医学、親子鑑定 | 健康診断、体質診断 | 研究、高度医療 |
精度・範囲 | 特定領域の正確な分析 | 特定遺伝子の機能分析 | 全遺伝情報の包括的分析 |
DNA とは?正式名称や基本的な構造を知っておこう!
DNA はデオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid)の略で、リン酸、糖、塩基で構成されている化学物資です。ヒトは約37兆個の細胞でできており、その細胞の中にある核の中に存在します。DNAは細胞核の中で対になって2本がらせん状に鎖のように繋がった状態となっていることから、DNAの構造は2本鎖DNA(二重らせん構造)ともと呼ばれています。2本鎖 DNA はヒストンというタンパク質に巻きついた状態で存在しており、細胞が分裂する時には凝集して「染色体」という構造になります。ヒトの染色体は23対46本あり、染色体を伸ばすと約1.8mにもなると言われています。
また、 DNA の中にある「塩基」はA(アデニン)・T(チミン)・C(シトシン)・G(グアニン)の4種類あり、この塩基の並び方を塩基配列と呼び、この塩基配列の並び方によって人体の様々な違いが生まれて来ることになります。ヒトの塩基対は約60億個あると言われており、とても膨大な量であると言えます。
【ちょこっと豆知識】
この DNA の二重らせん構造を見つけたのはアメリカ人のJ・D・ワトソンとイギリス人のF・クリックです。当時、 DNA が遺伝の中心的な役割を担っていることはある程度知られていましたが、この複雑かつ膨大な遺伝情報をどのようにして制御しているのかについてははっきりわかっていませんでした。しかし、この二重らせん構造モデルの発見によって、 DNA の働きや遺伝情報の制御なども見事に説明することができ、現在では、 DNA が相補的な塩基同士と結合した2重らせんとなっている理由は、より小さい体積でより多くの遺伝情報を持つことができること、相補的であるために損傷などが起きた際の修復が容易であることなどの理由が考えられています。これらの発見からワトソン博士にはノーベル賞が贈られました。今日我々が手軽に DNA 検査を受けられるのも彼らの研究と発見によってもたらされています。
遺伝子とゲノム、DNAとの違いは?
DNA と混同される言葉に「遺伝子」と「ゲノム」があります。これらは似たような使われ方をされますが、それぞれ別の意味を持っています。
遺伝子は身体を作る設計図
DNA が鎖のようにつながった「 DNA 鎖」の中で、身体の設計図となる「情報」となる部位があります。その情報こそが「遺伝情報」であり、その部位こそが「遺伝子」です。つまり遺伝子とはDNA鎖の一部となります。遺伝子があることで、身体の働きに合わせた場所で、働きに合わせた細胞になることができます。そのため、遺伝子は「身体の設計図」や「たんぱく質の設計図」と呼ばれています。
ヒトは約30,000の遺伝子をもっていると言われています。この遺伝子に存在する遺伝情報を元にたんぱく質が作られ、そのたんぱく質は「細胞の材料」であったり、「ホルモン」であったり、「酵素」であったり、生きていくための様々な機能を担っています。この「たんぱく質をどのように作るかを決めるための設計図」を先祖代々受け継いできているものが遺伝子です。
ゲノムはその生物の遺伝情報の全て
ゲノムは英語で「genome」と書き、「gene(遺伝子)」と「chromosome(染色体)」からできた言葉です。意味としては、その生物を決定する「 DNA 鎖の遺伝情報の全て」のことを意味します。ヒトゲノムは約32億もの塩基対で構成され、約23,000個の遺伝子が含まれていると言われています。ちなみにイネのゲノムは約4億塩基対、ショウジョウバエは約1万8000塩基対と種によってゲノム数は異なります。しかし、ヒトに最も近いチンパンジーのゲノムはヒトと同じ約32億塩基対で、その違いはたった2%の塩基配列の違いと言われています。
しかし、この違いが生物の種類を決めるもので、ヒトからはヒトしか生まれない根拠となっています。