火災鑑識とは
火災鑑識(Fire Investigation)とは、現場から証拠資料を収集し、それらを分析し、火災の出火箇所と発生原因を明らかにすることです。
火災事件は他の事件捜査と同様に、現場に立脚した観察及び物的証拠資料が基本となって行なわれます。
実際の出火現場では、多くの物的証拠資料が焼失を受けるために、焼け跡の残存する資料の保存状態で真相の究明が左右することもあります。

火災鑑識
科学捜査に於ける火災鑑識とは、出火原因に関係する燃焼残物を現場で確認・収去し、その燃焼残物から出火に係わる要因と認められる特異的・異常的な状況が観察されるか否かを見分することです。
では火災鑑識とは、どのような科学捜査なのでしょうか。
初期調査
火災鑑識は他の捜査同様に、計画を持って進められて行きます。
- 1
出火建物の構造・収納物の確認、種類や位置、そして火炎の状況
- 2
設備に関する状況確認、電気(配線や器具)・ガス(配管や設備)
- 3
関係者からの事情聴取、早期発見者や消火従事者、近隣への聞き込み
- 4
気象状況の確認、出火の原因には気象が影響を及ぼす場合も少なくありません。
- 5
写真撮影、現場で目視発見が困難な場合でも、後に新証拠が発見される場合もあります。
出火箇所の判定
出火箇所とは、火災の発生した場所の事です。多くの検証材料から、総合的な見地から判断します。
- 1
出火箇所付近の壁・柱・機器・天井などの精査
火災は、出火箇所側が先に燃焼することによって構造に弱体化が生じる事を前提としています。
ですから、この現象は建物構造や収納、消火による影響も考慮されます。 - 2
炭化深度
燃焼の強い所ほど炭化深度が進むという考えを基にしています。ですから例外も考慮されます。 - 3
炭化形態
これは火の性質と燃焼を基に、火災伝播による火炎の方向を見定めていきます。 - 4
不燃物の剥離状態、変色状態
不燃物が高温で加熱されると表面変化が現れます。これらを検証します。 - 5
電気配線・電話線などの熔融痕(電気火災の可能性)
- 6
ガス・調理台・暖房機などの精査(燃焼器具による可能性)
ガスの配管や器具の精査 - 7
化学性物質の検査
燃焼残渣から出火箇所付近に燃焼促進(油類)にあたいする成分が存在するか否か。 - 8
微少火源類の検査
微少火源は焼失により存在しない場合が多い、そのため着火した可燃物を主体に検査します。
出火原因の判定
出火原因究明は、多くの事象から検証された結果を得て、総合的に判定されます。
火災原因は、発火源が出火原因となったことを立証する必要があります。
ですから、発火源と周辺の可燃物との相互関係を現場状況から明らかにしていきます。
放火犯を追う
火災には不慮による失火により、大きなダメージを受ける方がほとんどです。しかし、これとは別に故意に火を放つ放火犯がいます。放火は、殺人・強盗に次ぐ凶悪犯罪です。有罪となれば相当の代償を負う事となります。
残念な事に、火災原因のトップは「放火」なのです。一般的な放火犯は「薬物使用者」や「異常めいてい」「妬み」「恨み・仕返し」などです。
ですが、自分の財産や自宅などに火を放つ放火犯がいます。この放火犯の目的は「保険金」です。
放火事件は、一般的な火災とは明らかに異なる事象が多く見受けられます。
なにが発火し、どの様な燃え方をしたのかを特定することで、放火か否かが解ります。
近年では、GC-MSなどの分析装置も高感度が進み、以前では特定できなかった成分も正確に判定することが可能になり、さまざまな放火犯と対峙することが可能になっています。