筆跡鑑定資料としてのコピー文書
筆跡鑑定資料(鑑定物)に対して鑑定物が原本なのかコピーなのかが、問題になるケースがあります。
コピーは手軽さとともに原本の内容を忠実に複製できるといった利点があることから、今日では、コピーの利用頻度は高く、社会的信用度も定着しています。
筆跡鑑定の現場においてもコピーされた物を鑑定資料とするケースが増えつつあります。
しかし、筆跡鑑定・現場の立場から言うとコピーは結局、情報の少ない複製物です。原本に代わるものとは、なり得ません。
筆跡(文書)は、一見すると2次元の平面画像のように見えますが特殊顕微鏡などで観察すると、文字は3次元的構造を持って存在している事が改めて認識できます。
筆跡鑑定では筆跡(文書)上にみられる3次元的要素が、鑑定を行う上で重要な役割を果たしています。
(3次元的要素=筆順や運筆、文字構成の上下、改ざん文字の有無など)
コピーは文字を劣化させてしまいます。一見すると同一書類の写しのように見えますが、顕微鏡で観察すると、コピーのコピーでは文字の情報(特徴)すら判別できなくなります。
種 類 | 接 写 | 顕 微 |
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原 本 入筆部/書き順/筆圧など 詳細なデータが得られます |
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原本のコピー 文字の持つ物理的データは 得られません。形態のみ |
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コピーのコピー コピーのコピーでも鑑定しています。 特徴が判読できれば問題ありません。 |
コピーのコピーでも鑑定は可能です。文字の特徴判読に少し影響する可能性もありますので、できるだけ原本またはファーストコピーが望ましいです。
筆跡鑑定資料としてのコピー文書が不利な理由
筆跡鑑定において、コピー文書が証拠として提出されることがありますが、その場合には不利な要素が存在します。
まず、コピー文書は元の文書と比べて画質が低くなり、細かい筆跡の情報が失われてしまうことがあります。これにより、正確な筆跡鑑定が困難になる可能性があります。
また、コピー文書は本来の文書とは異なるペーパーサイズ、色、光沢などの特徴があります。このため、筆跡鑑定に使用される光学機器や技術が、コピー文書の特性に対応していない場合には、正確な鑑定が困難になることがあります。
さらに、コピー文書は不正な改ざんの可能性があるため、文書の真正性を確認するための検証が困難になることもあります。
このような理由から、筆跡鑑定においては、原本の文書が最も望ましい証拠とされます。原本がない場合には、最良のコピー文書を提出することが求められますが、筆跡鑑定の正確性に影響する可能性があることを念頭に置いておく必要があります。
筆跡鑑定資料としてコピー文書を用いたい方へ
コピー文書は原本と比較して、文字や線の太さ、色調などが異なって見えることがあり、鑑定の精度が低下する恐れがあります。そのため、完全な比較検査を確約するものではありません。
法科学鑑定研究所では、最善の努力をして鑑定を行いますので、ぜひ私たちにご相談ください。お客様のニーズに合わせた、適切なサポートを提供いたします。