車両火災鑑定
車両火災は建物火災に次ぐ件数が報告されています。
総務省消防庁刊行の「令和4年版 消防白書」によると、令和4年の総出火件数36,375件中、車両火災は3,414件発生。全体の10%近くを占めていることがわかります。車両火災は1日に9.3件の車両火災が発生してる計算になります。また、車両火災に於ける負傷者の数は、総火災件数の僅か3~4%です。
火災原因欄の「その他、不明、調査中」の割合を見てみると、建物火災が31.3%に対し、車両火災では38.3%と大きな割合を占めています。
この結果は、実際に車両火災が発生しても十分な捜査が行われていない事を示しています。
放火は殺人に次ぐ重罪ですが、死傷者の少ない車両火災には、十分な人数の捜査官を投入出来ていない。と言うのが本当の所だと思われています。
民間鑑定機関の役割
車両火災と聞くと、多くの方は死傷者が出る重大事故と思われると思います。しかし、車両火災で乗員が亡くなることは、本当に稀な事なのです。
それは、初期発火の際、焦げ臭く感じたり、煙が出るなどの兆候があり、走行を中止し車両を降り、しばらくすると火の手が上がる場合がほとんどだからです。そのために車両火災は重大な事故なのですが、殺人や傷害とは違い、捜査官を現場に投入できる人員の不足が生じています。
ですから、車両火災は火災原因を巡り、トラブルが多い領域でもあるのです。
その為、裁判に発展する事案も多く、これらの車両火災には、民間鑑定機関が車両火災鑑定の重責を担っているのが現状なのです。当社は、何れの傘下にも属せず、中立・公平な科学鑑定を目指しています。
車両火災鑑定の方法
車両火災の鑑定方法は、以下の手順に基づいて総合的な見地から判断します。
- 1
火災現場の精査
火災現場に赴き、車両の周囲状況や残骸の状態を調査します。
焦げ跡や火の広がりのパターン、破壊された部分などを観察し、火災の範囲や火元を特定します。 - 2
物理的な証拠の収集
火災現場から物理的な証拠を収集します。
これには、車両の残骸や損傷部分の詳細な調査、異常なパターンや破壊の形状、火災の痕跡などが含まれます。
また、火災の初期段階で消火された場合でも、重要な証拠が残っている可能性があります。 - 3
成分分析
火災現場での物理的な証拠から採取したサンプルに対して成分の分析を行います。
この分析により、火災の原因や可燃物の存在、成分分析の特性などを評価します。
成分分析は、火災の引火源や燃料漏れなどの特定に役立ちます。 - 4
電気系統の調査
車両の電気系統を詳しく調査します。配線の状態や接続部分、電気機器の故障などを調べ、電気系統に関連する状態や熔融痕跡などを精査します。 - 5
目撃者証言の収集
火災現場周辺の目撃者から証言を収集します。
目撃者の証言は、火災発生の状況や燃え方の特徴などを提供し、鑑定結果を補完する重要な情報となります。
出火原因の判定
出火原因究明は、多くの事象から検証された結果を得て、総合的に判定されます。
火災原因は、発火源が出火原因となったことを立証する必要があります。
ですから、具体的な事案によってはさらなる詳細な調査や特殊な手法が必要となる場合もあります。発火源と周辺の可燃物との相互関係を現場状況から明らかにしていきます。
わたしたち法科学鑑定研究所では
信頼と良識を持ち中立で公平なスタンスで以下の項目を行っています。
項 目 | 内 容 |
---|---|
火災現場の調査 (出火部、出火原因の調査) |
・現地調査(状況分析) ・測量・計測(光学計測分析) |
残渣分析 (燃焼可燃物の有無) |
・赤外分光検査 ・GC-MS分析 ・質量分析 |
火災状況の再現 (車両火災鑑定) |
・燃焼実験による検証 ・画像解析法による分析と検証 ・コンピュータ・シミュレーションによる検証 |
研究・開発 |
・各種検査方法の研究と開発 ・専門ソフトの開発 |
主要顧客 | ・裁判所/警察、法律事務所、教育/医療機関、一般法人/個人 |
参加学会 (法工学関連) |
・日本法科学技術学会 ・日本犯罪学会 ・日本火災学会 など |
よくある質問-車両火災鑑定
- 車両火災の原因は何が考えられますか?
車両火災の原因は様々ですが、一般的な原因としては電気系統の欠陥、燃料漏れ、過熱、不適切な修理や改造、放火などが挙げられます。車両火災鑑定では、火災の痕跡や証拠を分析し、具体的な原因を特定する試みが行われます。
- 車両火災の鑑定にどのような情報や証拠が必要ですか?
車両火災の鑑定には、火災を起こした現車、火災発生時の写真やビデオ、火災現場の状況、被害車両の情報、火災の目撃証言、保険会社の調査報告書などの情報が必要です。これらの情報や証拠は、鑑定人が火災の原因や経緯を分析し、科学的な結論を導くために使用されます。
- 鑑定結果は保険会社や裁判所で利用できますか?
はい、鑑定結果は保険会社や裁判所で利用されることがあります。保険会社は鑑定結果を元に保険金支払いの決定を行うことがありますし、裁判所では鑑定結果が証拠として提出され、事件の解決や判決に影響を与えることがあります。
- 車両火災鑑定の費用はどのようになっていますか?
車両火災鑑定の費用は、鑑定の範囲や深度によって異なります。状況に応じてお見積りいたします。一般的には、火災現場の調査、証拠の収集と分析、鑑定報告書の作成などが含まれます。鑑定費用については、鑑定機関と依頼者の希望を検討し相談の上で決定されます。