交通事故鑑定-事例集 (2)
バイク運転手が死亡した事故
事故概要
夜間、A バイクが優先道路を進行中、左方の路地から B 車が A バイクと同一進行方向に左折進入。A バイクはB 車との衝突を回避できず、A バイク運転手が死亡した事故。 B 車にはドライブレコーダー(以下、ドラレコ)映像あり。
事故状況図
B 車の主張
進行してくる A バイクの姿は無かったため、左折で優先道路に入り進行したところ、B 車の後方に衝突する強い衝撃を感じたため、直ちに車両を停止させて後方を確認したところ、A バイクが衝突したことが分かった。A バイクは相当なスピードで走行していたために、減速が間に合わずに B 車の後方に衝突した事故であると主張。
依頼内容
依頼者: A バイクの弁護士
B 車が主張するような事故であったのかどうか、事故態様を明らかにしたい。
鑑定実施
1. ドラレコ映像
B 車のドラレコ映像を確認すると、左折開始直前の時点で赤矢印の方向にヘッドライトで路面が照らさ れている状況が確認される(写真1)。その約1秒後に B 車は左折を開始し優先道路に進入。ドラレコの 撮影範囲に A バイクは撮影されていない。 B 車の左折中、すれ違う対向車があることが確認される(写真2)。
(写真1)
(写真2)
2.Aバイクの損傷
Aバイクは前面部分の損傷がなく、フロントカウル底部の損傷(写真3)と後輪左側面にホイールの擦過痕とタイヤに溶融痕が確認された。
(写真3)
(写真4)
3.B車の損傷
右側後部座席下のアウタパネルに凹損と車体後方から強く突き上げた損傷が確認された (写真5)。また、後輪タイヤには溶融痕が認められ、溶融痕は前進回転方向へ広くなっていることが確認された。
(写真5)
(写真6)
4. ドラレコの音声解析
B 車の左折中に対向車とすれ違い、対向車と並んだのと同時に強い衝撃音が入力されていることが確認された(写真6~8)。
(写真7)
(写真8)
衝突時のサウンドスペクトログラム
5.A バイクの速度について
B 車の左折開始から衝突までの時間などから算出すると、A バイクが時速 30km で走行していた場合でも、B 車との衝突を回避することはできないことが明らかになった。
鑑定結果
A バイクが優先道路を走行中、わずか 8 m ほど先の左路地から B 車が出てきたことで、A バイクはブレーキによる衝突回避は困難との判断から、咄嗟に反対側車線へ進路を向けるが間に合わずに B 車の右後方部と接触。
体勢を崩した A バイクは B 車と対向車の間に挟まれる状態になり、身体の右側が対向車と衝突し、大きく転倒したところで再び B 車と衝突したものと結論した。
この鑑定結果により、A バイクに有利な内容で和解が進められた。
鑑定結果のイメージ図
※本事例は実際の当社交通事故鑑定より構成しておりますが、個人のプライバシーなどに配慮し、一部 内容を変更しております。
あらかじめご了承ください。
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