爆発鑑定・爆発分析
急激な膨張が起こる現象を、「爆発」と呼びます。爆発現象が起きた場合、その被害は甚大です。
爆発鑑定は、真実を裏付ける最新の科学捜査方法なのです。
法科学鑑定研究所における爆発鑑定・爆発分析は、爆発事件や火災事故などの調査と証拠の科学的な分析を行う事です。これらの鑑定や分析は、法的な手続きや事件の解明に貢献するために行われます。
爆発鑑定では、爆発物や爆発装置の特定、爆発の原因やメカニズムの解明、爆発の影響範囲の評価などが行われます。また、火災が爆発を伴う場合にも、火災の原因や起源、燃料の特定などを調査します。
爆発分析では、現場で収集された物理的な証拠や化学的な証拠を分析します。これには、爆発物の成分や組成の特定、爆発の痕跡や痕跡物質の検出、爆発の反応過程の解明などが含まれます。分析結果は、鑑定結果や法的な証拠として使用されることがあります。
爆発の仕組み
一般的によく知られている爆発現象は体気圧の差による爆発です。
ゴム製の風船を想像して頂ければ簡単です。この風船を針など尖った物で刺すと、パンと割れます。
この現象は風船内の高い気圧が、周りの気圧と均衡を保とうとするため、急速に膨張し風船が割れるのです。
(一種の爆発です)
この風船の中身を少し変えてみます
・もし、風船の中身が水素ガスだったら・・・
・そして、風船にライターを近づけたら・・・
水素ガスに引火し急速な熱膨張を起こし、破壊力をもった爆発の効果が現れます。爆発は化学的な事象や物理的な事象、気象や状況により複雑化していきます。
火薬
ある物質が化学反応を起こして、その結果発生した高熱、高圧ガスを工業的に利用して弾丸を発射させたり、あるいは物を破壊しようとするものが火薬です。
また火薬類は非常に不安定な物質で、わずかの外力を受けても容易に急激な化学反応を起こします。
しかし、あくまでも工業的に利用できるもの、と言う条件が付きます。
火薬類以外でも敏感な不安定な物質はたくさん存在しています。
火薬類は次のように分類されています
火薬 | 1) 黒色火薬=火炎、摩擦、衝撃に敏感ですが自然分解の心配はない。 2) 無煙火薬=ニトロセルロース又はニトロセルロースとニトログリセリンを混合したものを 主剤としたもの、その高圧ガスか現象に優れ拳銃弾、砲弾の発射に使用される。 保管状態によっては自然分解により発火、爆発の危険がある。 |
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爆薬 | 最も知られているものに起爆薬、カーニット、ニトログリセリン、ダイナマイト、 六硝酸マンニット、TNT、ピクリン酸など いずれも爆発反応は猛烈で、爆薬内部を毎秒数千メートルという早さで反応が進行します。 (爆風圧の波の早さは音速を超える。) 猛性火薬類と呼ばれ、破壊的用途に使用されています。 |
火工品 | 工業雷管、電気雷管、銃用雷管、導火線、煙火(花火)など |
ガス・化学薬品
可燃性ガス
可燃性の気体は可燃性ガスと呼ばれ、空気中または酸素中で燃えるガスのことです。
代表的なガスを挙げると、水素、メタンガス、プロパンガス、都市ガスなどがあります。可燃性ガスには、ある一定濃度のガス量と酸素が存在している状態で着火すると爆発するという性質があり、ガス爆発事故の原因物質となっています。(新橋の飲食店爆発事件が記憶に新しいところです)
ガスは以下のように分類されています
爆発性化学薬品 | 単独爆発成分と混合爆発成分に分類されます。 |
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可燃性ガス類 | 高圧ガス・都市ガス・自然発生ガス・発生器ガスなど |
引火性液体蒸気類 | ガソリン・アルコール・酢酸エチル・アセトンなど |
粉じん爆発 | 混合物質爆発とも呼ばれ、浮遊する粉末状で気体爆発現象が起きる |
水蒸気爆発 | 物理的爆発現象、水が密閉状態で急速に膨張し密閉容器 を爆発させる場合や、溶鉱炉などの若干の水分が爆発現象 を起こす場合などである |
爆発調査
爆発犯罪の場合
犯罪としての爆発事件には、主に火薬、爆薬、煙火類が使用されるケースが多く、 固相爆発を起こし、気相爆発よりも爆発の威力が強く、往々にして漏斗孔を生じるから、 その被害形態や被害状況からガス爆発などとは明確に区別が出来ることが多い。
爆発犯罪においては、漏斗孔の形成のほか、二次的火災を誘起することも稀であるのみ ならず、時限装置や起爆用の雷管、導火線、補助物を要するから、 それらの破片類を現場に残すことが少なくない。
爆発事故の場合
おなじ固相爆発でも火薬類以外の爆発性化学薬品類による爆発は、 火薬類と類似の成分の場合はともかく、 成分上特徴のあるガス成分や残留物を残すことはまれであり、 起爆原因も、それ自身の衝撃、摩擦による発火や、 火災による二次的な誘爆などが主因になることから、 これらの点で爆発自体から直接手掛かりを得ることは難しい。
爆発鑑定
爆発鑑定にあたっては、一般的に物的証拠となる資料数が著しく少ないケースがほとんどです。爆風により、広範囲で資料が散乱し、重要な鑑定資料の入手自体が容易ではありません。
そのために、保全収集された鑑定資料そのものよりも、爆発直後、捜査官が入手した事実状況や写真、聞き込みにより得られた情報などに重点がおかれる場合が多いのが実情です。
したがって、捜査面で関係者を調べを進めると同時に鑑識面での物的証拠の収集と保全を行い、他のいかなる場面と同じですが、特に爆発事故、爆発事件に関しては、出来るだけ発生直後、科捜研・科捜研に臨場要請を行い、専門家の現場観察を行います。
刑事裁判などでは、警察関係研究所で作成された鑑定書の正当性が問われることとなります。
爆発に絡む民事裁判は、なぜか同じ顔の弁護士、同じ鑑定人が登場することが多いのです。
もちろん、事件や事故が少ない事もありますが、火災や爆発保険金詐欺を専門とする弁護士が少ない事と、民間の爆発に関する専門家が限られるためと、考えられています。