音声/声紋鑑定とは
「声紋鑑定」「再現実験による検証」「改ざん・編集痕解析」
音声鑑定の種類
1「声紋鑑定」 | (比較対照資料を用いた、話者認識による異同識別検査) ・人の声に含まれる成分を解析し、人物(個人)を特定をする。 |
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2「音声鑑定」 | (比較対照資料を用いた再現実験による、声/背景音・環境音に着目する検査) ・音に含まれる特定音の成分を分析し、状況などを特定する。 |
3「音声鑑定」 | (録音物の編集痕跡を分析し、内容が改ざんされているか否かを判定する検査) ・音に含まれる成分を分析し、編集痕跡の存在を検査する。 |
声紋鑑定
音声に含まれる個人性情報を用いて、その声が誰の声であるかを判定する事を「話者認識」と呼びます。
「話者認識」には、「話者識別」と「話者照合」の2つに大別されます。
「話者識別」とは、入力音声が予め登録されているn人のうちの誰の声であるかを判定する検査法です。
例えば、捜査の結果、数名の被疑者が浮上した場合、その音声がいずれかの人物かを特定する検査は「話者認識」に相当します。
「話者照合」とは、入力音声同時に自分が誰であるかのIDを入力し、その音声が本当にそのIDに対応するヒトの音声であるか否か判定するものです。
例えば、脅迫・恐喝/誘拐事件などにおいて、被害者に一連の内容で度重なる電話が架電あった場合、架電者が同一人物なのか、違う人物なのかは「話者照合」に類します。
また、民事事件に多い、録音物のフレーズが自分の声なのか否かなどの検査は疑問フレーズの対照用録音物を用意し、比較検討する事ですので「話者照合」になります。
いずれの場合も、入力音声と登録されている話者の発声パターンとの類似度を計算し、その値に基づいて判定を行います。
音声による話者識別または話者照合を行うにあたり、音声信号のスペクトル分析を行い、その結果を紋様で描いた声紋(サウンド・スペクログラム)を主に使用して、行うものを「声紋鑑定」と呼びます。
これに対して、アクセント・音韻・語彙など言語学的特徴に着目し判定を行うものを「言語学鑑定」と呼ばれています。
再現実験による解析
録音物の場所の特定や、編集による差し替え録音されたものに関しては、再現実験により対象用の資料を作成し、比較検討する検査方法です。声紋と同じサウンド・スペクログラムを使用しますが、背景音や環境音に着目し検査を行います。
疑問のある録音物がヒトの声の場合は、周波数帯を絞り込んで検査を行いますが、背景音や環境音に着目する場合は、ヒトの聞き分けられる周波数帯よりさらに周波数領域を拡大し、検査が行われます。
この再現実験を行うことで、録音された部屋の大きさの違いや、環境音に着目すれば、録音された場所が同じか否かも判定する事が出来ます。
改ざん・編集痕解析
録音の一部を消去して編修したり、別の録音物から、別の内容を挿入録音して、録音内容が変えられている場合、改ざん・編集痕跡を精査する検査方法です。
改ざん・編集痕解析は、声紋と同じサウンド・スペクログラムを使用しますが、連続性または不連続箇所に着目し検査を行います。
会話には、連続性がみられますが、背景音や環境音が明らかに異常です。
このように、挿入録音し改ざん編集してもスペクトログラムには異常が確認できるのです。
実際の裁判では、会話内容が重視され、反訳書=文書として証拠提出しますので、改ざん編集痕に気づかず、先方から出された反訳書を鵜呑みにし、準備書面や反論書を作成すると、辻褄が合わない理論となり、最終的には・・。
ですから、改ざん編集痕解析は、重要な検査であると言えるのです。
ヒトの会話部分の編集を行った場合、声(会話)には連続性が認められる場合ても、背景音や環境音には変化が生じてしまいます。つまり不連続箇所が確認されます。
この連続性又は不連続箇所を、精査することで、その録音物が改ざん・編集されているか否かが判定できます。
改ざん・編集痕解析
検査の実務上では、様々な状態の録音物が検査の対象となり、鮮明な会話が検査対象となる場合は少ない事なのです。
ですから、何度も検査資料を見直し、鑑定可能な特徴を探して行くのです。
電話機/架電場所の特定
事件などの捜査上、架電者が使用した電話機が、一般電話器か公衆電話機または携帯電話機なのかを特定することは、極めて重要な精査事項です。
音声鑑定の実務上に於いて、電話機の特定や架電場所などを推定することも含まれます。
少し前の刑事ドラマなどでは「逆探知・・」と使用される場面も多かったのですが、デジタル時代の昨今、架電しなくとも、場所の特定が可能です。
声紋鑑定の結果の確実性
裁判などの証拠としての価値は、指紋鑑定についで高く、筆跡鑑定より高いとされ、声紋鑑定の鑑定書のみで有罪・無罪が確定する案件も、少なくないのが現状です。
米国内に於いて長年に渡り、音声鑑定の証拠能力による論争が繰り広げられましたが、1982年にミシガン州警察による「法科学的音声鑑定」において、全24の地方裁判所(連邦第一審裁判所)の裁判官のうち22の裁判所の裁判官が音声鑑定を証拠として認めたと述べれ、音声鑑定の証拠能力の確実性が証明されました。
日本国内に於いて警察の捜査活動における音声の鑑定に声紋が利用された実績は、数百件にのぼり、裁判の証拠としても数多い実績があります。
司法上において「声紋鑑定の結果の確実性は高い」と評価、認識されています。