損失評価画像改ざんの疑惑に対する法科学鑑定研究所の画像解析結果
<概要>
米軍・NATOがリークしたロシアによるウクライナへの軍事侵攻の機密文書 法科学鑑定研究所は、ロシア側が行ったとされる損失評価の改ざんについて、疑惑を解明するために画像解析を実施しました。
<損失評価画像>
左=画像改ざんが疑われる画像 右=オリジナルとされる画像
ロシア側が公表したとされる 損失評価画像 画像改ざんが疑われる画像 | 米軍・NATOからリークされたする 損失評価画像 オリジナルとされる画像 |
ロシア側損失 16k-17.5 KIA (killed in action) 戦死 7ファイター(戦闘機)/ボンバー(爆撃機)、ヘリ8機 陸上車両(戦車など)600両 |
ロシア側損失 35.5k-43.5 KIA (killed in action) 戦死 72ファイター(戦闘機)/ボンバー(爆撃機)、ヘリ82機 陸上車両(戦車など)6004両 |
ウクライナ側損失 61k-71.5 KIA (killed in action) 戦死 60ファイター(戦闘機)/ボンバー(爆撃機)、ヘリ32機 地対空ミサイル21機、戦略的地対空ミサイル74機 |
ウクライナ側損失 16k-17.5 KIA (killed in action) 戦死 60ファイター(戦闘機)/ボンバー(爆撃機)、ヘリ32機 地対空ミサイル11機、戦略的地対空ミサイル34機 |
※k=1,000
左の疑惑画像と右のオリジナル画像を比較すると、左側画像ではロシア側には損失が少なくウクライナ側に損失が多くなっています。この画像に改ざんが行われた否かを当社画像解析チームにより判明していきます。
<背景>
ロシア側が関与する事象において、損失評価が改ざんされた疑惑が浮上していました。これに対し、関係者からは真実を解明するために調査が求められていました。法科学鑑定研究所は、信頼性の高い画像解析技術を駆使し、この疑惑に対する客観的な結論を導くことが期待されました。
<手法>
法科学鑑定研究所は、画像解析における専門知識と豊富な経験を持つ専門家チームによって調査が実施されました。解析対象となった画像は、ロシア側が提出したものであり、特に損失評価に関連する部分に着目して検証が行われました。
画像解析
改ざんが疑われる画像
画像解析
検査方法=法科学検査(フォレンジック分析)におけるノイズ解析
原理:見かけの色や形が同じように見える画像でも、撮影機材(センサー、レンズなど)や画像処理(圧縮処理など)などによって、画像データにわずかな差異が生じ、画像取得プロセスで生じる根本的な違いが明らかになる。
解説と検査結果
画像の改ざん・画像加工・画像合成などがあると、その部分にノイズが発生する。そのノイズを明確にすることで、どの部分に手が加えられたか判明する。
本件の画像解析では、ノイズ解析の手法を用いて検査を行いました。その結果、一部の部位において不自然なノイズが観察されました。そのため、この部位において画像の改ざんが行われた可能性が極めて高いと考えられます。
画像の改ざん手口として、オリジナル画像内の数字と文字を切り出し、編集・改ざんしペーストする手法は、一般的な画像改ざんの手法の一つです。これにより、元の画像のデザインやフォントは変わらないため、フェイク判定が難しくなる可能性があります。ただし、熟練した専門家や画像解析のアルゴリズムを持つシステムなどは、細かな特徴を検知して改ざんを見抜くことができる場合もあります。
また本件の改ざんではAIなどを用いた最新の画像偽造手法は確認されませんでした。
オリジナルの画像
尚、オリジナル画像においても同様のノイズ解析の手法を用いて検査を行いました。その検査の結果不自然なノイズは観察されませんでした。