画像から顔の法医学的識別
防犯カメラ|画像から顔の法医学的識別
防犯カメラは、駅・繁華街・銀行などに配置されるようになり、さまざまな現場で撮影された被疑者の顔の画像・映像が同一人のものなのか、といった事案が急激に増加してきています。
そこで防犯カメラに収められた映像情報を利用し。個人識別する手法を少しだけご紹介します。
顔識別の科学
よく画像解析の分野は、一般の方々に誤解されていますが、画像解析によるヒト識別の基本理論は「法医学及び解剖学」が基となり、分析の実践では画像工学、数学、構造工学の集大成で実施されています。
映画やドラマのように、たった一人の研究者がキーボードを叩くと、「しゅ~ん」と鮮明化された画像が現れ、事件解決する事など、ないのです。刑事事件や裁判資料ともなれば・・鮮明化画像を提出しても、
「よく似た他人です・・だってそこに居なかったもん」
などと・・反論されたら
「なっなにおぉ~・・どっから見たって・・おまえだぁ~」
「じゃ~証明してみてよ」
そこで法科学による画像解析が登場するのです。
では、どのような検査方法で解析が進められるのでしょうか。
ヒトの体は本当に多くの特徴点が存在します。
人体の各部分の長さや幅を客観的に示すためには、体表上に統一的に定められた点を指標として、一定の方法で計測しなければなりません。
この定指数は、国際的にマルチン法と呼ばれる生体計測法が用いられます。
解剖学的にヒトの顔を各部に分けてみると、
1:鼻 部 | 5:眼窩下部 |
2:口 部 | 6:頬 骨 部 |
3:オトガイ部 | 7:頬 部 |
4:眼 窩 部 | 8:耳下線咬筋部 |
大別して8か所、各部位は2種存在するので16か所、これらに外皮部、しわやほくろ、毛類部、眉毛などが加わります。
じつは正面からのヒト顔の測定点は全部で256点あります。
そして、各測定点間の距離も重要な証拠になります。
これらの測定点=特徴点を異同比較の指数としていきます。
・・では実戦です・・
細部まで見えている写真なら工学的解析は必要ありません。
・・どんなに優秀な防犯カメラでも・・
このように記録に残る事は・・・多いのです
ここから工学的な映像・画像の解析がスタートします。ここまで画像劣化が進んだ状態だと画像を鮮明化しても、この程度しか見えてきません。
(映画やドラマとは違うでしょ・・あしからず) ・・では何をするのか・・
まず輪郭を判明させて行きます。
劣化画像をドンドン拡大すると、ただの四角いギザギザになってしまいます。そこで、欠落している情報をコンピューターを利用し予測します。
映像・画像の世界の反対側は数字と記号の世界です。
理屈は
画像情報を2次元化した数字、110101 – – – – – 010101この間の数字。
つまり、欠落した数字が読めれば「点」が確認できると言う事です。
そして、輪郭を割り出します。
輪郭は、多項式&フーリエ級数を用いて検討することも出来ます。
つまり、何通りかの検討方法を併用し進められるのです。
最新の技術だけに頼らず、技術が確立された解析法を併用する事で
精度の高い解析が可能になります。
そして、すべての結果が一致した場合に次の工程へ進みます。
骨格特徴点を確認し始点を決定。
地図を作る航空写真や衛星写真は2台以上のカメラで同時撮影されています。
これにより撮影物体の「高さや奥行き」が分かります。
この技術を応用します。
同時に撮られた、数十枚から数百枚の画像を解析する事により、帽子や眼鏡など隠れた部分が見えてきます。
そして、決定された輪郭部のヒト識別の特徴点(計測点)を始点とし、再度、奥行きを算出します。
・・そして次々に決定された計測点を始点とし・・
・・ドンドン計算を続けます・・
最終的には 疑問資料から頭顔部座標を割り出しました。
この疑問資料の映像から作成した頭顔部座標と、対照用資料、該当者の鮮明写真などから同様に計算した頭顔部座標を比較します。
その数値結果を多変量解析の計算を用い検証します。
そして、最終数値を法医学的に解析します。
全ての数値データが解剖学的に矛盾点が無ければ、同一人物と認められます。
条件が揃えば、頭顔部から全身骨格を法医学的に精査し、精度を高めるのです。
これが画像解析の世界です。
・・・あっさり書いていますが・・・
本当に膨大な解析量を、こなさなければ、なりません。
よく画像解析は、誤解されていますが
法医学 + 数学 + 法工学 = 画像解析
これこそが・・・画像解析の真の姿・・・なのです(^^;
防犯カメラに撮影された車両の画像も、同様に処理し特定されて行くのです。