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画像解析

歩容解析

防犯カメラ|歩容解析|歩く姿で個人を識別する技術

歩容解析とは、防犯カメラなどで撮影された映像から、個人の歩行および身体運動を解剖学的解析および生体力学的分析を行い個人を識別しようとする技術です。

歩容解析は、1980年代後期にイギリスで研究が始まった 比較的に若い解析技術です。

2000年代に入るとイギリスはヨーロッパで一人あたりの防犯カメラが最も多く早期から犯罪に直結しながらも、検挙できずに膨大な資料に埋もれ社会問題化していました。

そこで、直接的な映像以外のもの、不鮮明映像や顔が写っていない映像から個人が特定できないかと、模索していました。

そんな中、画像解析研究者はある論文に興味を示しました。
整形外科関連学会論文において、歩き方である程度症状が判明することを、ヒトは二足歩行の際、さまざまな特徴を示し、その歩行は独特であること。
この医学的事象を防犯カメラ解析に応用できないかと研究が始まりました。

2003年にロンドンの裁判所である窃盗事件の判決が出されました。
この事件に証拠提出された資料が「歩容解析による個人識別」でした。

この資料は、後日イギリス警察技官のための学会に発表されました。
資料は、頭部の写っていない防犯カメラ映像約18秒物。映像には顔(頭部)が写っていませんでしたが上半身および下肢が写っており、足部の歩行をフレームごとに分析することで、十分な個人識別能力があるとして証拠提出され、重要証拠として採用されました。

この論文はアメリカをはじめ世界中に伝わり、本格的な研究が始まりました。

アメリカでは、2010年代に入るとさまざまな起訴事案に「歩容解析」が証拠として提出される様になります。

しかしそのアメリカで、技術を否定し揺るがす判決が、立て続けて出されてしまいます。

一つめは「歩容解析」では、何を特徴とするのか?

初期の歩容解析ではシルエット法と呼ばれる画像の輪郭を特徴としていました。
しかし、このシルエット法だと体型を隠すようなファッション(太めのジーンズなど)の場合、判定が曖昧で誤判定の可能性を否定できません。

そこで、骨格や解剖学的解析を用いて身体部の関節部を特徴とする方法が盛り込まれます。
しかし、ヒトの関節は複雑な構造でできていて、一方方向からの不鮮明な映像からでは、正確な関節位置の抽出は困難な場合もあります。

二つめは「映像の加工」「映像の見え方の違い」の可能性は無いのか?

画像解析、映像解析の技術は近年約10年間で、もの凄い勢いで進化しました。
防犯カメラも同じく、初期の防犯カメラはレンズは不鮮明で画素も小さく、最近はもの凄く高性能な物まであります。

特に高性能な物では、見えやすくする為の自動編集機能付きのものあります。
ですから、映像比・速度・コントラスト変化による変形などで見え方が違うことが無いのか。その映像が間違いなく真正な映像なのか、なども考慮しなくてはなりません。

三つめは「ヒトの歩きかた」に個人内変動は無いのか?

そもそも、意図的にヒトの歩き方は変えられる?のではないのか
靴を変えた場合や路面状況により、ヒトの歩き方は変化する可能性は無いのか・・
疾患的な特徴や体型的な、特に重要な特徴と捉えられる場合以外はどうするのか。

以上のことから、夢のある研究分野ですが、累積する問題は山積みです。
今後ますます専門性が高い技術力と専門技術者が必要になる分野になると思われます。

法、学とは少しズレますが、DEAやDoDの資料の中にも歩容解析レポートがあり、そちらでは、銃器を隠し持って歩いた場合や、薬物を隠し持って歩いた場合の研究レポートもあります。

群衆からヒトを識別する技術は、今後を考えると、ますます重要な科学技術になると考えられていて、さまざまな分野で同種の研究が行われています。

現状では、問題点が噴出している状態ですが、何かが起爆剤となり、突然大化けする分野かも知れません。
将来が楽しみな科学です。