薬物乱用の実態③-大麻-カルフェンタニル
乱用薬物の実態〜密造から化学式まで~
5.大麻/マリファナ・・合法な国もあるが、それでも違法だ!・・・
大麻/マリファナ
大麻取締法における「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル : Cannabis sativa L. )及びその製品を言います。
最近では、大麻は違法ではない! 戦後GHQから押し付けられた根拠のない法律だとする意見も出始めているが、現行法律では、所持が罰せられる。
もちろん諸外国では、合法な国もあるが、この大麻に関しては、賛否両論があるのも事実だ。
ただし、次のような報告もある。安全性についてである。
大麻は、同じ乱用物質であっても、覚せい剤のように殺人、放火など凶悪な事件を引き起こした挙句興奮して激しく暴れ死亡するということはない、と言われている。
コカインのように、高熱を発し脳出血で死亡したり、コカイン・ベビーと言われる先天奇形児が生まれることもない。
シンナーのように、脳の萎縮から中枢神経の崩壊をきたすこともない。
アヘンやヘロインのように、虚ろな目で虚空をにらみ、喚き、暴れ、狂い、ヨダレを流し、失禁し、頭や体を床にぶつけて血を流し、のたうち回り、凄惨、過酷で正視に堪えない離脱症状を呈するわけでもない。
ところが大麻には、動物実験では検出されず、統計に表れない思わぬ有害作用があったのである。
それが、大麻精神病と呼ばれる「中毒性精神病」である。
大麻を使用すると精神病を発症する危険が高くなることは、疫学調査で2005年にはっきり結論が出ている(Arseneault 2004,Semple 2005,Henquet 2005)。
発症のリスクが40%増加する(オッズ比1.4)(Moore 2007)と言われ、また統合失調症、動因喪失症候群から精神分裂病と、精神疾患が誘発される。
また、副作用のため医薬品として陽の目を見なかった数百種類の合成カンナビノイド(大麻を原料とする)の一部は、大麻系のデザイナードラッグや今で言う“危険ドラッグ”として乱用の対象になっている。
大麻中毒者はその後、さらなる刺激を求めて覚せい剤、コカイン、ヘロインへと流れる。
6.薬物の最終章・カルフェンタニル
カルフェンタニル:Carfentanil
最新医学は、アヘンからモルヒネ、さらに強力なヘロインへと、より強い鎮痛作用を求めて分子構造を変化させて生み出してきた。
医療用に使用されている麻酔薬や鎮痛剤の多くは、モルヒネやコカインの構造を真似して様々な誘導体を作り、効果や持続時間を変えたものである。
そしてその効果に関しての最終章ともいうべき物質が、開発された。
“カルフェンタニル”(Carfentanil、化学名:メチル1-(β-フェネチル)-(N-プロビニル-N-フェニルアミノ)-4-ピペリジルカルボン酸エステル)である。
非常に有望な治療効果を持っており、モルヒネを科学合成して強力な効果をもたらすヘロインと比べてもさらに4,000倍もの効力を持つとされる。
この薬物の4,000倍という値は、何を意味するのかというと、ヘロイン1回の摂取量の1/4,000で同一の鎮痛効果を実現できるということである。
つまり、密造化学者の頭には、「このカルフェンタニルを1Kg製造することは、ヘロイン4tを製造することに匹敵する」と考える。
ヘロインは、アヘンから精製したモルヒネを、無水酢酸を使用しアセチル化という科学変化を起こさせて、より強力なモノへと変化させた薬物である。
が、しかしカルフェンタニルは、これら薬物が持っている特徴をそのままにして、分子構造を計算し尽くしたデザイナードラッグで誕生した薬物である。
DEA(アメリカ連邦麻薬取締局)による[FUTURE SYNTHETHIC DRUG OF ABUSE]により、詳細が報告されている。
密造化学者は、そのパテントに合成法の概要が記載され公開されているので、どのようになったかは想像できるだろう。
もちろん合成法の概要から、詳細を割り出したのである。ちなみに合成例は、アメリカの特許情報(US Pat.5,106,983)として、公開されている。
DEAが出した警察と市民に向けた警告文
https://www.dea.gov/divisions/hq/2016/hq092216.shtml
出典・参考資料
■新裁判化学/裁判化学:南山堂、■薬毒物化学試験法:南山堂、■法科学技術学会誌:法科学技術学会、 ■乱用薬物密造の科学:データハウス・薬師寺美津秀 著、■覚せい剤Q&A:東京法令出版・井上堯子/他 著、 ■これが麻薬だ:立風書房・剣持加津夫 著、■薬物乱用・中毒百科:丸善出版・内藤裕史 著