薬物乱用の実態②-コカイン・ヘロイン
乱用薬物の実態〜密造から化学式まで~
3.コカイン
覚せい剤と並び、興奮状態を創出する乱用薬物の代表格は、“コカイン”である。
コカインの主成分は、コカの葉に含まれるアルカロイドであり、葉に含まれるアルカロイドは約0.3%とされ、そのコカの葉を直接化学処理/精製してコカインを製造する。
コカの樹木は南米に集中(栽培も含めて)しており、その中でもボリビア、ペルー、コロンビアが、産地の中心となっている。
ボリビアとペルーでは、栽培が合法と非合法が混在していると言われているが、コロンビアのそれはほとんどが非合法である。
有名な話だが、あの薬物密造販売の世界的組織、メディシン・カルテルの本拠地でもある。ここで密造されたコカインは、ほとんどが北米に闇輸出されている。
しかし近年、アメリカの9.11テロ後「米国愛国者法」が制定され、持ち込みが非常に厳しくなり、現在ではそのルートが北アフリカ経由でヨーロッパに持ち込まれているという。
コカインの違法取引は、莫大な富を生み出す巨大マーケットとなっており、その密造もまた組織的かつ大掛かりなものと知られている。
4.アヘンからモルヒネ、ヘロイン
コカインと同様に、植物が原料となる薬物“アヘン”
コカインと同様に、植物が原料となる薬物“アヘン”、そしてそこから得られる“モルヒネ”、“ヘロイン”。
このアヘンは、南米のコカインとは対極の地域である、アジア地域(ミャンマー、タイ、ベトナム、カンボジア、中国など)が中心で不正栽培されている。
しかし近年、コロンビアやメキシコでも不正に栽培され、ヘロインに加工されて独占的にアメリカに流出されているという。
アヘン中には40種類を超えるアルカロイドが存在し、meconic酸塩であるとなっている。これらの成分で一番重要なものは、モルヒネである。
ヘロインの製造過程は、3,6-ジアセチルモルヒネを作るためにモルヒネのアセチル化を伴い、 この時一緒にアセチル化されたコデイン(アセチルコデイン)が、密売ヘロインに10〜45%含まれる。俗にいう不純物だ。
押収されたヘロインを分析すると、このアセチルモルヒネの成分比が生産地によって変化している事が分かっているので、 アセチルコデインの含有状態は、ヘロインの生産地や製造元を把握することができる重要な鍵となっている。
ヘロインの密造は、以下の工程を経て製造される。生アヘンから純粋なヘロイン塩酸塩(ジアセチルモルヒネ塩酸塩)の変換作業の要約
生アヘンの精製
↓
アヘンからモルヒネを抽出・精製
↓
モルヒネから遊離塩基ヘロインに変換
↓
遊離塩基ヘロインの精製 塩酸塩への変換作業
出典・参考資料
■新裁判化学/裁判化学:南山堂、■薬毒物化学試験法:南山堂、■法科学技術学会誌:法科学技術学会、 ■乱用薬物密造の科学:データハウス・薬師寺美津秀 著、■覚せい剤Q&A:東京法令出版・井上堯子/他 著、 ■これが麻薬だ:立風書房・剣持加津夫 著、■薬物乱用・中毒百科:丸善出版・内藤裕史 著