薬物乱用の実態①-MDMA-覚せい剤
乱用薬物の実態〜密造から化学式まで~
乱用薬物の実態①〜密造から化学式まで~
密造の手順なども簡単ではあるが紹介しているが、もちろん密造を推奨しているわけではない。
ただ密造化学者は、あらゆるところから薬物を作成し、富を得ようとしている実態を知っていただくために、あえて紹介している。
富の裏側には、破滅している人々がいることを忘れてはいけない。乱用薬物は、違法であり、破滅への確実な一歩である。
1.MDMA ・・・黒胡椒(くろこしょう)からMDMAが作成できる・・・
世界には、薬物密造に関わる優秀な化学者が大勢存在していると言われている。
その中でも、化学者が最も関心を集めている乱用薬物が“MDMA”、通称エクスタシーだ。
特に若い年齢層に人気が高く、乱用者が多い。現状は、純粋なものが入手困難で、取引価格も比較的高いドラックだ。
そのMDMAが黒胡椒から作ることができる。(もちろん過程の途中からは、非合法となる)
何気ない日常の食卓にある調味料から麻薬、通常では考えられない工程からそれは作ることができる。その離れ業をやってのけた化学者の手法を、紹介しよう。
この秘密の科学的根拠は、こうだ!
黒胡椒からピペリン(piperine)という特有のアルカロイドが採取されるところから始まり、このピペリンがMDMAの化学構造の究極にシンプルにした形となる。
そしてこのピペリンを法的に監視されていない薬品類で分子構造を変形させて、徐々にMDMAにしていくという発想だ。
———余談だが、日本でもおなじみの七味唐辛子の麻のタネは、陶酔感をもたらす。
さらにアイスクリームにも使われる“バニラ”からは、エクスタシーも作成できる。
ただし、スーパーで販売しているバニラは、かなりの希釈がされているので、大量の原液からじゃないと難しい。
しかし古今東西、スパイスには、隠れた密かな陶酔感に由来していたと理解して良いし、また、そう考える密造化学者は多いということだ———
黒胡椒がMDMAになるまでの科学変化は、以下の通りである。
黒 胡 椒
↓
ピペリン
↓
ピペリン酸
↓
ピペロニル酸
↓
ピペロナール
(日本では特定麻薬原料に指定されている=違法)
↓
1-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-2・ニトロプロペン
↓
3,4-メチレンジオキシアンフェタミン塩酸塩(MDA)
↓
N-ホルミル-3,4-メチレンジオキシアンフェタミン
↓
3,4-メチレンジオキシ-Nメチルアンフェタミン塩酸塩(MDMA)
2.メタンフェタミン・・・漢方薬の“マオウ”から密造・・・
一般的に覚せい剤と呼ばれる薬物は、メタンフェタミンである。
諸悪の根源と称され、人々を幾多の破滅に導いたことは、周知の事実である。
MDMAやMDAと違い、純粋(?)に興奮剤としての作用が現れ、身体的、精神的依存度が極めて高く、なおかつ中毒が深刻である。
覚せい剤(メタンフェタミン)にも、多くの合成法が存在する。
主原料のエフェドリンを確保しやすい環境(北朝鮮はエフェドリンを大量に輸入してるとされ、 中国などは“マオウ” (麻黄)の産地である)にある、中国、韓国、北朝鮮などのアジア諸国の密造者たちなどでは(北朝鮮は国家ぐるみと聞く)、 このエフェドリンを、直接化学変化させてメタンフェタミンを密造しているようである。
このメタンフェタミンの原料となる“エフェドリン”だが、あの漢方薬で使用される“マオウ” (麻黄)に、同様の成分が含まれている。
マオウは漢方で“葛根湯”(カッコントウ)の主成分であるが、薬局でも販売しているあの風邪に効く【葛根湯】である。
「証クリニック」のHPにこのように紹介されている。
「漢方薬や風邪薬でスポーツ選手がドーピング反応で陽性になるという話を聞いたことはありませんか?
それは生薬“麻黄”(マオウ)の成分、“エフェドリン”の影響です。
・・・葛根湯には麻黄という生薬が含まれていて、その学名をEphedrae(エフェドラ)、主要アルカロイド成分で“エフェドリン(Ephedrine)”が含有されている。
・・・エフェドリン”と“メタンフェタミン”…図は日本薬局方データベースから転載したものですが、いかがでしょう。とっても似ていますね。ほぼ水酸基(-OH基)一つの違いだけと言ってよいでしょう。
・・・このように、化学的に構造がとても似ていることが、スポーツ選手のドーピング偽(●)陽性問題に関わっていますが、“エフェドリン”のその生理活性にも注目すべき点があります。
“エフェドリン”には、もちろん“メタンフェタミン”のように強力ではありませんが、やはり中枢神経・交感神経系に対して賦活作用があります。
それゆえ、製薬会社の薬剤情報には、“麻黄”の入った処方の使用上の注意の欄には一律に、“不眠・発汗過多・動悸・精神興奮…”など交感神経系への副作用の可能性が列記されていたりします」と、 紹介されており、まさしくメタンフェタミンの原料のエフェドリンを含んでいる。
密造化学者はここに着目し、密造を図るのだ。
出典・参考資料
■新裁判化学/裁判化学:南山堂、■薬毒物化学試験法:南山堂、■法科学技術学会誌:法科学技術学会、 ■乱用薬物密造の科学:データハウス・薬師寺美津秀 著、■覚せい剤Q&A:東京法令出版・井上堯子/他 著、 ■これが麻薬だ:立風書房・剣持加津夫 著、■薬物乱用・中毒百科:丸善出版・内藤裕史 著