精液検査(精液判定)
精液検査(精液判定)は、精液が含まれる証拠物品(衣服や物)から、精液が含まれるかどうかを鑑定することです。
付着物がヒトに由来する精液か否か、そして、付着物がヒト精液と判定された場合には、血液型・DNA鑑定により個人識別も可能になります。
この、ヒトの精液に由来する物質なのか否かを 判定することを「精液判定」と呼びます。
精液の証明
性的犯罪の証明として重要なのは精液(精子)の検出です。
精液は、男性のひ尿成分から分泌される複雑な混合物で、その成分は4種類あります。この中で、約60%は精嚢線からの分泌物で、約30%は前立腺からの分泌物で、残りの10%は精巣上体線と尿道球腺の合計からの分泌物です。
ヒトの精液(精子)は、乾燥したものは無臭ですが、新鮮なものは特有の臭気を有し、布地などに付着すると地図上に広がり、淡黄色~灰色の混濁した粘稠液です。
精液の証明には、生化学的検査や生物学的検査など、様々な方法があります。代表的な検査法を以下にご紹介します。
① 外観検査
精液の証明において、外観検査は重要な手法の一つです。外観検査は、顕微鏡などの機器を使わずに、肉眼で精液の有無やその状態を確認することで、精液の存在を証明する検査法です。
具体的には、採取された生物学的証拠が、袋状の容器やペットボトルなどに入っている場合に、その外観や色、匂い、量などから、精液が含まれているかどうかを判断することができます。
また、服や寝具などについた汚れや染みなどについても、外観を見て精液の可能性があるかどうかを判断することができます。
② 光学検査法
精液の証明において、光学検査は重要な手法の一つです。光学検査は、特定の波長の紫外線(UV)光や赤外線(IR)光を用いて、生物学的証拠中に含まれる精液の成分を検出する検査法です。
具体的には、精液中に含まれるタンパク質やアミノ酸などは、光学検査で容易に検出できます。また、光学検査によって、精液が検体上に存在するかどうか、また、その量や分布状況を確認することができます。
③ 顕微鏡検査
精液の証明において、顕微鏡検査は重要な手法の一つです。顕微鏡検査を使って、精液の有無やその状態を確認することで、精液の存在を証明する検査法です。
具体的には、精子の詳細と同定のために、染色を施し検査を行います。顕微鏡を使用して、精液中に含まれる精子の形態や動き、数量などを観察することができます。また、精液の量や色、凝固性などの特徴も顕微鏡検査で確認することができます。
染色には、バエッキー染色、コランストッキー染色、パパニコロウ染色法・ショール染色法・Diff-Quik染色法などを用い顕微鏡検査を行います。
パパニコロウ染色は、細胞診断のために開発された病理検査法で、子宮癌や肺癌の検診にも取り入られている検査法です。
パパニコロウ染色は核染色と細胞質染色があり、この染色法で精子を染色します。
頭部の先端は淡い青色に染まり、中片部は赤く染まり、後部は暗い青に染まります。
ショール染色は膣スメアにおけるホルモン動態の評価を目的として開発された染色法です。染色法が簡易な事からパパニコロウ染色の代わりに敏速細胞診断に用いられています。
Diff-Quik染色法は、湿固定によるパパニコロウ染色で細胞の剥離が多い液状検体に対して細胞保有率が高い標本作成法とされ、パパニコロウ染色よりも敏速な細胞診断が必要な場合に用いられている染色法です。
染色法は数多く存在し日夜進化を続けています。
さまざまな状態の試料を扱う法科学分野では、試料状態により検証済みの染色法を使い分けます。その試料状態に対して臨機応変に対応し、その答えを導くのが使命だからです。
尚、本検査法は検体が新鮮な場合に可能です。
④ 化学的検査
精液の証明において、酸性ホスファターゼ(Acid Phosphatase)検査は重要な手法の一つです。酸性ホスファターゼは、精液中に豊富に存在する酵素の一種であり、その活性は非常に高いため、微量でも検出が可能です。
酸性ホスファターゼ検査では、精液中の酸性ホスファターゼを検出することで、精液の存在を証明します。この検査は、専用の試薬を用いて、酸性ホスファターゼと反応させ、その反応によって発生する色を測定することで行われます。
なお、酸性ホスファターゼは、精液以外にも、前立腺や腺房液、膀胱液などにも存在するため、注意が必要です。
⑤ 血清学的検査
精液の証明においての血清学的検査では、人間の血清中に存在する特定の抗体を検出することによって、精液の存在を証明します。
具体的には、男性の精液に存在する特定のタンパク質を検出する抗体を、女性や被害者の血清中から検出することで、精液が含まれていることを示します。この検査は、一般的に、犯罪現場での生体証拠採取後、被害者の血液サンプルから行われます。
⑥ 解析
各種の検査結果を分析し、総合的にヒトの精液(精子)か否かの解析が行われます。
精液判定の評価は、その『物に対する知識』よりもその『物を見極める為の技術』が重要な鑑定と言えるのです。