Bloodstain

血痕鑑定とは

血痕鑑定(ブラッド・パターン)とは

 犯罪や事故などの証拠資料の中で、ヒトに由来する細胞や組織片は、法医学的鑑定によって証明される必要があります。その中でも、最も重要な証拠が「血痕」です。血痕は、捜査や裁判において極めて大きな役割を果たす証拠となります。

 しかし、肉眼での判断だけではなく、事前検査や本検査を実施して正確な鑑定が必要とされます。法科学鑑定研究所では、高度な技術と専門知識を持った鑑定人が血痕鑑定を行い、公正かつ正確な結果を提供しています。

 

外観検査(肉眼による所見検査)

 血痕らしきものが発見されると外観検査が実施されます。血痕鑑定で最も重要なのがこの外観検査(形態検査)です。 この検査を誤ると大事な証拠となる血痕を汚したり破壊してしまう恐れがあるからです。

<形態検査>

血痕色調/陳旧性、血餅形成の有無、輪郭の形状、これらの検査を行うことで、血痕か否かがある程度判定可能です。

また、血痕色調は経年によって変化することも知られています。

(新)暗赤色→赤褐色→褐色→緑褐色→暗灰色→灰色→退色(古)
専用のチャート表(比色計)を用いて「色調検査」を行います。

スマートフォンを使用した高感度かつ高精度な血痕年齢推定
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0956566318307024

 スマートフォンを使った新しい血痕年齢推定技術が開発されました。この技術は非常に高感度かつ高精度で、血痕がどのくらい前についたかを推定することができます。これにより、事件現場や事故現場での血痕の年齢を正確に把握することができ、重要な証拠となります。

 

血痕検査で判明すること

血痕検査により判明する事柄は、大きく分けて2種あります。

一つめは、その血痕の形態・状態・大きさから事件や事故の状態を推測すること。
二つめは、その血痕の持ち主を決定すること。

 

<現場状況を推測する>

 例えば、事件が発生し犯行に刃物の凶器が用いられれば、被害者の血管から出た血液が、事件現場はもちろん、犯人の衣服や犯人の持つ凶器にも付着します。

 血痕の形状は、出血部位・血液の粘稠度・滴下量が起因となり付着する物質との距離・角度などで決定されています。人体から出た血液は、数分間は凝固しません。粘稠な液体となって様々なものに付着します。
血痕は、法医学鑑定を行うために採取されますが、採取する前段階で、必ず色調/形状/大きさを観察/記録することが要求されます。

 

事件現場の床や事故現場の壁/天井に見られる血痕は「滴下血痕」「飛沫血痕」の二つに別けられています。

「滴下血痕」は、ある高さから血痕が垂直落下したものを指します。刺された被害者が歩いた場合、床には円形の血痕が残ります。

「飛沫血痕」は、動脈切断による場合と、凶器の振り上げ運動により、壁や天井に飛来した血液を指します。通常は「!」←このような形になります。

 この画像は、血痕が付着する角度によって形が変わることを実験したものです。
左側の90°は垂直に落ちた「滴下血痕」を表しており、右側の10°は壁面に飛散した「飛沫血痕」を表しています。
血痕の形状は、血液が付着する方向や角度によって異なります。
このような実験データをもとに、血痕鑑定を正確かつ科学的に行っています。

血痕
(Henry Lee’s Crime Scene Handbook)

 この画像は、血痕が高さの変化によって大きさがどのように変化するかを実験したものです。
血痕は非常に粘性があり、高さによって大きさが変化するため、高い位置からの滴下ではより大きな血痕が形成されます。逆に、低い位置からの滴下では小さな血痕が形成されます。このような特性は、現場で発見された血痕の大きさや形状を解析するために重要です。

血痕
(Henry Lee’s Crime Scene Handbook)

 この画像は「擦過血痕」と呼ばれるもので、物体に触れたり擦れたりすることでできる斑痕です。擦過血痕の特徴は、布地のような浸透性のある物質でも、表面だけに斑痕が残り、裏側には染み込まないことです。
擦過血痕は、事件現場や物品から発見されることがあり、鑑定によってその時の状況や犯罪者の行動などを推測することができます。

血痕
(Henry Lee’s Crime Scene Handbook)

 血痕の付着には一定の法則があるため、血痕の形状を観察することで被害者の位置や現場状況を推定することができます。そのため、犯罪や事故現場においては、捜査官が血痕の外観形状を目視で探査し、犯行状況や事故状況を推測することが可能です。
つまり、血痕は現場で最も重要な証拠の1つであり、捜査の鍵を握っているのです。

血痕

前のページに戻る

血痕分析・血痕鑑定Top