最新・科学捜査! 光の魔術ALS(Alternative Light Sources)

Forensic Alternative Light Sources

光のはなし

赤、緑、青の3色の光が、「光の三原色」である。
この3色の光を合わせた光は「白」になる。
この3色の光の明るさを様々に組み合わせることにより、全ての色を作り出すことが出来る。
分かりやすいところだと、モニター(テレビ)は、この三原色を利用して
多彩な色を組み合わせて物を表現している。

光の三原色
色の三原色

勘違いしやすいのが、「色の三原色」である。
これはインクや絵の具など自身で発光しないものを使って様々な色を作り出す。

「色の三原色」は、シアン(明るい青色)、マゼンダ(明るい赤紫色)、黄色の3色である。

白色光から赤色の光を吸収し、残った光を反射することで見える色がシアン(白-赤=シアン)。
白色光から緑色の光を吸収した色がマゼンダ(白-緑=マゼンダ)。
白色光から青色の光を吸収した色が黄色(白-青=黄色)。

この3色を混ぜると、赤も緑も青もすべて吸収されて
何も反射しないために黒(白-赤-緑-青=黒)になる。

ただし色に関して、厳密な混合が出来れば黒になるが、
実際は色の光の吸収もれなどが起こり、真っ黒にならない場合が多い。

そのため、プリンターなどの印刷機では、色の三原色に加え、
黒のインクも使用し吸収もれを補っている。

FALS(Forensic Alternative Light Sources)は、
この「光の三原色」と「色の三原色」の特性を生かし、
見えない物を浮かび上がらせる。

光は電磁波

「光」とは、"波動"である。
1860年代に、イギリスの科学者ジェームズ・マクスウェル博士が
電磁波の進む速度と光の速度がほとんど一致した(秒速30万Km・30万Km/秒)ことから、
「光は電磁波の一種」であると発見した。

いわゆる「光」は、電波、赤外線、紫外線、X線、ガンマ線などと同じ種類のものである言える。

電磁波の種類には、ラジオやテレビ、携帯電話などの通信などに使用される「電波」。
物をあたためる「赤外線」。目に見える「可視光線」。
日焼けや殺菌効果のある「紫外線」。レントゲン撮影に使用される「X線」。
放射性物質から出る「ガンマ線」。これら全てが<電磁波>である。
これらの<電磁波>は、波長だけが異なるが同じ仲間である。

この特性を生かし、現代ではレーザ(光線)の開発により、
医療機器、天体観測機器、オーディオ機器、加工機器、プリンタなどに応用されている。
そして、この技術革新の恩恵を少なからずとも科学捜査分野で受けることになる。

科学捜査における光

1970年カナダ警察が、
水冷式のアルゴン(イオン)レーザを科学捜査に使用したのが最初といわれている。
レーザの先には、目視では見えない物が発見された。
それは指紋であり、体液であり、繊維類であった。

しかしアルゴンレーザは、あまりにも高価で大きく、実験的には有効であったが、
実用面においては越えなければならないハードルが数多くあった。
(現在このアルゴンレーザは、医療分野のレーザメスや、歯のホワイトニングに活用されている。)

1980年代に携帯用のレーザが開発され、
それまでラボに持ち込まなくては解析できなかった現場資料が、
事件現場の最前線にて、その威力を発揮し始めた。
ALS(Alternative Light Sources=代替光源:特定の光の波長を創り出すライト)の始動である。
しかし、それでもかなり高価なため全ての捜査機関に配備することは困難であった。

近年、LEDs(Light Emitting Diodes=発光ダイオード)の開発に伴い、
ワット数が低いが手軽に携帯できるほどに値段も下がり末端の捜査機関にも配備が進んでいる。
ただし日本では、その認識が未だに低く、鑑識には配備されていないのが現状である。
LEDsの特徴は、安定した色を発光することが出来る。
スペクトルバンド幅は、25nmで、1w(ワット)のLED光は
1wのレーザと同じ程度の蛍光を発光させることが出来る優れものである。

UV/紫外線(Ultraviolet=紫を超えた!)

現在一番注目を浴びているのが、ALS(Alternate Light Source=励起光源)である。
肉眼では見えない微量な証拠をスペクトル(波長)を替えることで発見することが出来る。
この日本語に翻訳された「励起」のとおり、ほとんどの有機物質は発光させることが可能である。
物質は、ある一定のスペクトルの光を吸収して、違うスペクトルで発光する。
その特性を利用するのである。

多くの物質は、紫外線(UV)や赤外線(IR)を照射することにより発光する。
しかし、通常は背景の白色光があるのでその発光を見ることが出来ない。
だが、その白色光を取り除く事が出来れば、見えないものが姿を現す。
つまり、可視光線をカットし紫外線領域または赤外線領域のみを透過するフィルターを用いる。
可視光線領域は、400nm(ナノメートル)から780nmである。
非可視光線領域は、400nm以下の紫外線。
780nm以上の赤外線である。
どちらも人間には認識出来ない(見えない)光線である。
紫外線の特性については、下記のようになる。
紫外光線領域は、110nmから400nmでさらに特性により、3分割されている。
UV-A(長波長紫外線)320nm~400nm。
この波長域の特性は、オゾン層を通過し地表に到達する。
紫外線の90%以上がUV-Aである。
UV-Bほど有害ではないが、長時間照射を受けると人体への懸念もある。
UV-Aを浴びた後は、皮膚は赤くならず黒っぽい色素沈着が起こる。
女性の大敵、シミやシワ、タルミの原因である。

UV-B(中波長紫外線)280nm~320nm。
特性は、殆どオゾン層に吸収されるが、一部は地表に到達する。
最近人間が発生させたフロンガスの影響で、このオゾン層が破壊され
オゾンホールを出現させてしまった。
これらの事象により、人体に有害な320nm以下のUV-B,UV-Cを地表に多く到達させている。
この領域は、皮膚や目に非常に有害で、
日焼けや皮膚ガンの原因となり有害紫外線と呼ばれている。
UV-Bを浴びた後は、皮膚は赤くなり、皮がむけ水疱が出来る。
UV-C(短波長紫外線)110nm~280nm。
この領域は、非常に有害で、基本的にオゾン層に吸収されて地表に到達しない。
特性は強い殺菌作用があることで知られている。
この領域は、医療機関などで殺菌灯、殺菌ランプ、清浄機器などに利用されている。
通常は見えない光線領域だが、視認するため青の光を加えている。
蛍光塗料が光るのは、蛍光物質が目には見えない紫外線を吸収して可視光を発するからである。
蛍光は、X線や紫外線、可視光線が照射されてそのエネルギーを吸収することで
電子が励起し、それが基底状態に戻る際に余分なエネルギーを電磁波として放出し
物質や物体が光を発することである。

通常は可視光を発することを発光と言うが、
それ以外の領域の光に対しても発光(紫外発光、赤外発光など)する。

光は、エネルギー保存の法則により、
分子に吸収された光のエネルギーもこの法則に従い消えてしまうことはなく、
形を変えて分子内に保存される。
光を吸収した分子は通常の状態ではなく、
それ自身もっと大きなエネルギーを持った励起状態(分子が興奮)になっている。
しかし分子は、この状態で安定することが出来ない。
そこで、余分なエネルギーを放出して通常の安定した状態に戻ろうとする。
この時に、例えば化学変化を起こしたり、熱を発したり、あるいは発光したりする。

つまり、原子や分子に紫外線というエネルギーが照射されると、エネルギーレベルが上がる。
そうすると、余ったエネルギーが『蛍光』という形で放出されるようになる
というのが、発光の原理なのだ。
屈折・反射・干渉・回折・偏光という、光が持つ特性により
通常の可視光では見えないものを浮かび上がらせることが出来る。
カラオケボックスなどでも使われていて、白色シャツなどが青白く蛍光を発光したり、
また紙幣やパスポートの偽造を発見するのに使用されている。
さらに、UVの透過を利用して人間の皮膚を透過させて、
通常では見えない皮膚下の打撲痕なども発見できる。

FALSの使用項目

ライト波長(nm) 使用項目 G / F
フラッシュライト(白) 通常の捜査など なし
900.850 偽造書類、燃焼物
625 毛髪、繊維、発射残渣、燃焼物、爆薬痕、ニンヒドリン 赤/橙
590 シアノアクレリート、ローダミン6G、ニンヒドリン、蛍光繊維、ガラス 赤/橙
530 指紋、シアノアクレリート、ローダミン6G 赤/橙/黄
505 指紋、DFO,シアノアクレリート、ローダミン6G、ニンヒドリン、足跡 赤/橙/黄
470 血液、唾液、精液、尿、骨、足跡、偽造紙幣、偽造パスポート 赤/橙/黄
455 シアノアクレリート、ローダミン6G、ニンヒドリン、蛍光繊維、ガラス 赤/橙/黄
410.395.385.365 血液、唾液、精液、尿、繊維、毛髪、足跡、打撲痕、偽造紙幣、偽造パスポート 赤/橙

G=ゴーグル、F=フィルター

IR(infrared rays)/赤外線(infrared=赤より下)

赤外光線領域は、770nmから1.000nmで、赤外線もさらに特性により3分割されている。
(※1.000nm(ナノメートル)=1μm(マイクロメートル)=10^-6m(メートル))
近赤外線は、可視光線に比べて波長が長いため散乱しにくい性質がある。
薄い布などを透過しその先の物体を見ることが出る。
又この応用により、赤外線ランプを照射し夜間でも撮影が出来る監視防犯カメラや
軍事用の暗視スコープでも利用されている。
科学捜査用ライトは、もちろんこの紫外線や赤外線の特性を利用して見えないものを発見する。
また、可視光線領域の特性も利用し、非破壊検査に活用している。
赤外線ライトやスキャナーが、偽造文書などの非破壊解析に非常に有効である。
それにより文化財などの木簡や書の消えてる文字を、復元することが出来る。
このテクノロジーを応用し、科学捜査では、作為的に偽造された書類や、
ワープロなどで契約書を偽造した場合など、
わずかなスペクトルを変更するだけで消された文字、加えられた文字を解析できる。

VR(Visible ray)/可視光線

可視光線は、太陽やそのほか様々な照明から発せられる。
通常は、波長の可視光線が混合した状態である。
この場合、光は白に近い色に見える。
プリズムなどを用いて、可視光線をその波長によって分離してみると、
それぞれの波長の可視光線が、人間の目には異なった色を持った光として認識されることがわかる。
各波長の可視光線の色は、日本語では波長の短い側から順に、
紫、青紫、青、青緑、緑、黄緑、黄、黄赤(橙)、赤で、
俗に七色といわれるが、これは連続的な移り変わりであり、
文化や国によって分類の仕方は異なる。

可視光線という区分は、あくまで人間の視覚を主体とした分類である。
紫外線領域の視覚を持つ動物は多数ある(一部の昆虫類や鳥類など)。
太陽光をスペクトル分解すると、その多くは可視光線である。

科学捜査では、この可視光線の照射により発見できる物がある。
500nm前後で、指紋や足跡。
600nm前後では、ファイバー、毛髪、銃の発射残渣、爆発発物残渣、燃焼残渣などである。
これらも前述したようにこの領域の波長が、物質を発光させる。

しかしこれらを視認するには、重要なアイテムが必要になる。

カラーゴーグル / カラーフィルター

科学捜査におけるALSは、非破壊による証拠の発見である。
ただしそれには、欠かせないアイテムが必要になる。
それは、色つきのゴーグル/フィルターである。
この色つきのゴーグルやフィルターの特性により、
不要な光をカットすることにより発見が容易になる。

例えば、色つきゴーグルやフィルターは、特定のスペクトルの光を遮断し
対象となる物質の発光を増幅させる効果がある。

代表的なのが「黄色」「オレンジ」「赤」の3色である。
黄色は、紫や青い光線を遮断する。
オレンジは、青緑と緑の光線を遮断する。
赤は、紫や青い光線を遮断する。

トレーニング・スキル

どのような最新の科学捜査機材も、その原理、特性を知らなければ使い熟せない。

アメリカ最大の法科学教室を持つニューヘブン大学、ヘンリー・リー教室では、
FALSに関するカリキュラムや実習などに多くの時間が割り当てられている。

具体的には

発光、燐光などの原理とともに、ライトの照射角度、出力Wのコントロール
遮断光の強弱、波長の微調整など
同一検体を用い数種類から数十種類の検査を体験させ、
ALS特性を徹底的に教え込む

上記の写真は精液瘢痕を用い、具体的に何を使うと、どうなる、それは何故か・・
そして、資料の保管状況の違う検体ではどうなる。など・・

科学捜査の最前線で即、利用できる武器を提供している。

ヘンリー・リー教室は、一般の生徒に混じり、世界中の警察技官も留学に来ている。

そして、増え続けるカリキュラム、割り当て時間の多さを知ると
世界中の警察関係者が、どれだけFALSに期待しているのかが肌で感じられるのだ。