DNA鑑定の分析装置

中・高校生や一般の方で、科学捜査に興味を持たれた方が
DNA鑑定って、本当はどんな装置や機材で、何の検査してるの?
と、ご質問が度々ございました。

ご質問には、全愛情を持ってお応えせねば・・(^^;
と、いう訳で、このページでは、
DNA鑑定で使用される分析機たちの一部を紹介いたします。

序説

DNA鑑定は、よく誤解されていますが、
もの凄く多くの工程を処理し検査が行われています。

また、1種類の検査機器で結果が出ると勘違いされています。
でも実際の検査では、数十種類の検査機器や分析装置を使用します。

このページでは、代表的な分析機器を検査順にご説明いたします。

前処理

どんな試料でも汚れや不純物は付いています
それらを、丁寧に取り除いて行きます。

【マイクロピペット】ギルソン「ピッペットマン」

DNA鑑定に限らず生化学や臨床には必ず使用する大事な物
決められた一定量を吸い上げるスポイト^^;
DNA鑑定ではエッペンチューブに
A溶液210ul + B溶液10ul + C溶液110ulを添加しマスターMixを作成
そして、マスターMix をPCRチューブに15ulづつ分注
こんな作業を延々と行うので、手に馴染まないモノは使わない
色々なピペットを使ってみるが結局ギルソンに戻ってしまう。
そんな理由からか、ブーメランピペットと呼ぶ人もいる。

DNA鑑定で使用されるマイクロピペットは本当に酷使されます。
ですから、少しずつ精度が狂ってきたり、最悪な場合壊れたりします。
推測通りの結果が出ず、検査全体を再度見直すとマイクロピペットが15%もずれていた。
なんて事もあります。
同じマイクロピペットを使い続けると、その個体差が感覚で解り始めます。
すると、こいつ調子が変わって来たなぁ~・・メンテ出すかぁ~・・と
ここまで使い込めば、本当に頼りになる相棒となります。

DNA鑑定は多くの検査機器を使用しますが、機器に振り回されないために
いつも機器を疑いながら検査全体をコントロールし実施されています。
吉川英治先生が書かれた宮本武蔵の一節に「神を尊み、神に頼らず」と出てきます。
少し意味が違いますが、DNA鑑定の各試験も良く似ています。
「機器を尊み、機器に頼らず」すべての各試験は主人の私がコントロールするのです。

DNA抽出・精製

前処理された試料から、DNAを抽出します。

【核酸抽出・精製装置】ABI「Auto Mate Express DNA Extraction System」

少し前まで、細胞からのDNA抽出は、
遠心機を用い、細胞やタンパク被膜を溶解し核からDNAを取り出していました。

最新の核酸抽出装置は、表面加工した磁性体粒子にDNAを吸着させ
磁石でコントロールしDNA抽出を自動化するものです。

【核酸抽出・精製装置】Qiagen BioRobot EZ1 Advanced XL

(専用に開発されたキット試薬)

でも、難しい試料は、相変わらず「手作業」
試料の様子を確かめながらマニュアルでDNA抽出が行われます。

定量・測定

収量DNAの測定を行います。

【リアルタイムPCRシステム】ABI StepOnePlus™

様々な試料を扱う法科学分野では、その試料のDNA定量を知る必要があります。

例えば、口腔スワブの綿棒の場合、収量DNAが多すぎると誤判定の要因になります。
そんな時は、リアルタイムPCRで定量を取り、希釈量を決定していきます。

(コントロールDNAと検体試料をセットにして検査します)

簡単に説明すると、DNAが少なくても多くても誤判定になるので、
その前に量を計り試料の調整をするのです。

リアルタイムPCRの導入以前、定量測定は検査者の経験値が物を言う世界「職人領域」でした
リアルタイムPCRは超高感度測定を可能にし、科学捜査の世界でも大活躍しています。

核酸増幅装置

DNA鑑定に必要な領域のDNAだけを増幅させます。

巨大なヒトのゲノムの中から、ヒト識別に用いられる特定領域の
DNA断片だけを選択的に増幅させるDNA増幅装置

【サーマルサイクラー】 GeneAmp PCR System 9700

複数のGeneAmp PCR System 9700をコントロールするPCRビレッジの一部

法科学分野で行われる分析機は国際標準に準拠しなければなりません。
このサーマルサイクラーは、全世界の法科学研究所に標準配備されている機種です。

ですから「DNA型鑑定書」と書かれた物は、このサーマルサイクラーを使用します。
つまり、これ以外を使用すると、鑑定書とは書けない、と言うことなのです。

【サーマルサイクラー】ABI Veriti® Thermal Cycler

最新のABI社製 Veriti®サーマルサイクラーの設定画面

(美しい~・・わかりやすい~・・これならミスが出にくい~)

Veriti サーマルサイクラー と Identifiler PCR 試薬キット

電気泳動セットアップ

PCR産物を、分配し泳動試薬を自動的に注入

HAMILTON社製 MICROLAB STAR (Liquid Handling Workstation)

リキッドハンドリング・自動分注装置

(内部はブルーのLEDが輝き、チップはブラックチップ・・まさに未来型バイオロボット)

数多くの試料をあつかう中規模以上のDNAラボでは、
手作業によるミスやコンタミを排除するため、数種類のバイオ・ロボットが活躍する。

キャピラリー電気泳動装置(シーケンサー)

増幅したDNAを電気泳動し、DNA型を判定します。

ABI 3500xL ジェネティックアナライザ 24本キャピラリ

上部に Applied Biosystems アンド HITACHI のロゴが^^・・いいよぉ~日本製は、ホントに

この3500xLのキャピラリ、自動設定&オートランが進化し
精度と安定性が求められる検査に威力を発揮します。

ABI社製 3130xl ジェネティックアナライザ 16本キャピラリ

ABI PRISM®3100の問題点を改良された後継機モデル。ABI社納得の自信機
この機種も国際標準に準拠したモデル、世界中の警察研究所に配備されています。

3130xl の内部、LEDが美しいしぃ~・・完成度が高いのが見た目で解りますよね。

ABI PRISM® 310 Genetic Analyzer 1本キャピラリ

・・それでもやっぱり・・これが好き♪・・

安定性、信頼性は抜群。
他の検査での再検査や確認用マニュアル解析などディープな解析は超得意
いくつもの世界的論文を排出してきた超ド定番モデル
昨年ネイチャー紙に載ったオックスフォード大の論文もこのモデルを使用

どんなにシーケンサーが進化しても、どんなに外観が変わっても
この310は絶対不滅です。
なぜなら、最新のシーケンサーが正しいのか、そうでないのか判定するシーケンサー
それがABI PRISM® 310 Genetic Analyzerなのです。

番外編/次世代シーケンサー達

2010年~のDNA鑑定は、SNPs解析(一塩基多型)の時代と呼ばれています。
そこで、SNPs解析に用いられるシーケンサーをご紹介します。

Applied Biosystems SOLiD™ 4システム

次世代シーケンサーの代表格SOLiD™ 4
1ランあたり最大100ギガ(1,000億)ベースのマッピング可能なシーケンスデータ
もしくは14億タグ以上のリードを産出することが可能
ヒトゲノムが30億塩基対、つまり3ギガ・・という事は・・(凄www)・・

Applied Biosystems Ion torrent™ Ion PGM™ シーケンサー

Ion PGM™ シーケンサは、半導体チップ型のマイクロチップを利用した
高速かつ高精度のベンチトップ型のシーケンサです
マイクロチップを変更するだけで、リード数やスループットを変更できます。

マイクロチップの装着はこんな感じ・・近未来型・・雰囲気いいでしょ♪
卓上なのにヒト遺伝情報(ギガクラス)を軽々と読んでしまいます。(・・カッコイイ・・)

解析/鑑定

各試験結果の状況を得て、DNA型の解析を行います。

実際のDNA鑑定で使用される機器や解析装置の結果は、
100%の客観性が保証されています。
それは、結果の読み取りは、検査者の目視に依存しておらず、ソフトによる表示だからです。

しかし、100%の客観性は、100%の正確性ではありません。

キット化された試薬を用いて自動化された解析装置で検査するとはいえ、
インプット量や設定を勘違いしただけで、最終結果はまったく違う結果になることも。

キット試薬にはロットによりクセがあり、解析機自体にも個体差が存在します。

さらに、既成化された検査方法に、合わない方もいらっしゃいます。

解析装置から得られた結果の客観性は100%ですが、
その表示された結果が、DNA型として妥当であるか否か、
すなわち、最終的に判断する100%の正確性とは、
鑑定人である、ヒトの判断によるものなのです。